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線は、僕を描くのSTAYGOLDぴあ映画生活のレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
4.5
この國に生まれてよかった
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楽しくて楽しくて仕方ない瞬間がある。ただただ、生み出すことが楽しい。そう、まるで、この世界は自分のために在るような。

劇中の横浜流星くんを観ていて、そんなことを思い出した。もちろん、その先には苦しみも痛みも待っているのだけれど。その場所を何度も通り過ぎたら、その創作は生き方となる。

単純に書くということ。書き続けるということ。
濃淡やセンスは二の次。

以前、手を染めて、またぞろ気になり出した東京友禅も、やはり自分のいろを紡ぎ出すのが一番大切だと教わった。もちろん、基本は大切だ。

とにかく、劇中の流星くんは、ほんとに楽しそうだ。ただ、それは消し去りたい暗闇を忘れるためでも在る。でも、それでも、何かに打ち込めるということは暗闇の黒を淡くうすめるチカラを持っている。同様に清原伽耶が演じた先輩書家の闇も、書くことによって薄められてゆく。

咲いた花を書くのは、その一番美しいときを留めるという責務。記憶と記録。忘れてはいけないなにか。写真では無い、絵画にも無い、古典の雅という手法で刻む想い。

淡々と過ぎてゆく日常の中で、老いも成長も語られる。なんか、頭からずっと銀幕がぼやけてて、こまった。

あのころ。
この瞬間。
そして、これから。

モノヅクリとは人生と同じ。同じ瞬間など二度とこない。だから一期一会を大切に、そのときで白いキャンパスを染め抜いてゆく。あゝ、だからずっと思い出が頬をつたっているのか。マスクで顔を包みながら、そう思った。

…恥ずかしいなあ、オレ。
やっぱ、いくつになってもコドモやわ。

けど、素直なよい作品を感じさせて頂きました。
ほんと多謝です。それしか言えないわ。とほほ。

これだから、映画との人生はやめれない。

そう。
いつだって答えは 遥か彼方にある
それが映画です。

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