ブラックユーモアホフマン

ザリガニの鳴くところのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.0
いいルイジアナ映画でした。
実際の物語の舞台はノースカロライナだけどクレジット見ると撮影場所はルイジアナのようだった。

例によってまたどんな映画だか全然知らずなんか話題になってたよなくらいの認識で観て、ベストセラーが原作というのは観た後知ったのだけど、まあ明らかに小説が原作の映画だなというのは見てる間に分かった。でそういう映画は嫌いじゃない。結構好き。

いきなりCGの鳥が飛ぶシーンから始まってオープニングのクレジットを見ると主題歌がテイラー・スウィフトと。あそういう感じなのね、と意外に思う。なんかポスターの雰囲気だけから察して暗くて陰湿なバイオレント系サスペンスかと勘違いしてた笑

実際に見てみると上品で理知的で人肌の温もりのある人間ドラマだった。まさに映画の中の人々の彼女への偏見と同じような笑
一人の女性の人生を巡る中で部分的にはミステリーでありメロドラマであり法廷劇であり。見どころ盛りだくさん。

そもそもコロンビアピクチャーズの映画だったのかというところから驚き、そしてプロデューサーにジョン・ウーとリース・ウィザースプーン。普通にビッグバジェット映画じゃん!笑

相当前に観てあんまり覚えてないけど薄っすら『ブリッジ・オブ・スパイ』とかも思い出した。デヴィッド・ストラザーンからはマーク・ライランスみも感じた。マーク・ライランスは『ブリッジ・オブ・スパイ』では弁護される側だったけど『シカゴ7裁判』では弁護する側だった。そしてデヴィッド・ストラザーンはスピルバーグなら『リンカーン』に出ている。

女性原作者、女性主人公、女性脚本家、女性監督、女性撮影監督で作られたことに意味のある作品だった。映画の中にフェミニズム的な視点がない訳ではない。結末も含めて女性が一人で生きることの困難さを描いた映画ではある。しかしそれが殊更に強調された主張の強い映画でもない。普通にそれなりに面白い映画。でもそれがいい。だって女性が映画を作る理由がその人が女性であることである必要なんて無いのだから。それにそもそも女性が女性主人公で映画を撮るという時点で、そこには意識せずとも女性ならではの演出が入るわけで、それが面白いところなんじゃないか。意識してやるフェミニズムだけがフェミニズムだけじゃないというか。

【一番好きなシーン】
ラスト、どんどん時間が進む。願わくば、弁護士先生のその後も描いて欲しかったとは思うが。