あおいことり

ザリガニの鳴くところのあおいことりのネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

持ち点0.5±
★演者 0.5
★演技 0.5
★音楽 0.5
★感情 0.5
★美術 0.5
★評価 0.5
★特筆 0.5

原作未読
再鑑賞

少し加筆しました。

《感想》
湿地帯の美しさと生物の愛らしさ。たった一人で自身の孤独を慰め、自然と共存して生き延びる力強さ。生い立ちと不幸の連鎖が交差した描き方にミステリーである事をしばし忘れて涙ぐみながら見てしまった。私的には再びテイトと結ばれるところで、ひと足早くクライマックスを迎えてしまいました。スコアは甘めになります。

《解説》
ミステリー主体で観る方には作品の描き方に多少の不満が残るような気がします。謎解きの答え合わせに【殺害方法】や【トリックの種あかし】は含まれないからです。

最初の語りで彼女が犯人であると匂わせて、犯人とわかる経緯を少しずつ物語に織り込みながら本題である【彼女の人物像】を深掘りしていく作品。

《経緯》
チェイスの洋服に付着した赤い毛糸から殺害現場にカイアが居たことがわかります。
またチェイスとカイアで櫓に登った時に、チェイスは足で格子を元に戻しており、カイアはそれを知っています。事件後は格子が外されていました。

カイアは孤独に生きる事と怯えて生きる事はまるで違うと考え「そんな暮らしはイヤ、次はいつ殴られるかと震えて過ごすのは…」と石を手に握り立ち向かう決心をします。またジャンピンとの会話で誰の手も借りない事を伝えています。

会食ではメスの手強さを話しています。蛍の光り方は2種類あって交尾用と捕食のためのニセの誘いがあるという内容です。予め、チェイスを呼び出していた事を想像させます。またこの作戦は生きる為の知恵と説明しています。

最後の種明かしとなるのは、テイトが読んだ遺品の日記です。「自然はどんな生き物たちも生存のため奮闘していると知っている。時には獲物が命を繋ぐため、捕食者を葬る事も。」と記されており、イタヤ貝のペンダントも隠していました。テイトはここで初めてカイアが一人で戦い抜いた事を知ります。日記にはテイトとの思い出、カマキリの生態、チェイスという捕食者、イタヤ貝のネックレスを隠し持つ被食者の自分が描かれていたという意味になります。カマキリは交尾中にメスがオスを殺して食べる習慣があります。証拠隠滅しなかったのは前述の通り、彼女も自然の一部で被食者を描くことも自然の観察者所以の行動かもしれませんね。

《憶測①》
会食は数時間、最終バス23:30でバスの運転手はカイアを見ていません。法廷では変装の可能性を訴えていたから変装が有力ですかね。カイアのホテルからバス停は近いため、23:30以前に乗車の可能性もあ…る?格子を外しておいて、待ち合わせしていたチェイスとキスしながら目標近くまで行って自分は服を脱ぐ振りして体を離しながら押せば落ちる?そんな簡単に行く?足跡の泥掃除はどうやってした…?小説を読めば解決するのだろうか。

《カイアの語り》
うつろいゆく自然
潮のように自然はわたしを導く

湿地は死を熟知し
死を悲劇と決めつけない
罪も見出さない
私は湿地。
自然の一部なのだ。

《ザリガニの鳴くところ》
兄は父の暴力に対して「俺はもう無理だ」と言ってカイアを置いて去る。危険を察知したら湿地を捨てろと言う代わりに「用心するんだ。危ないときはザリガニの鳴くところまで逃げろ。母さんの口癖だ。」と告げて。

父も去り、彼女は生き延びるために知恵を絞り湿地で暮らしていくしかありません。数人を除いた街の人間が彼女にとって恐怖の対象でいつの間にか湿地が彼女にとっての逃げ場所であり母のような存在《ザリガニの鳴くところ》になって彼女を支えていきました。

《事件》
死亡時刻 10/30 0:00-2:00
死因は地上19mからの落下による衝撃
現場の櫓は格子が外れていた。
櫓の梁に血痕と毛髪(一次損傷の原因)
落下中に後ろ向きに落ち、後頭部を打った。
殺人か事故かは不明。
遺体の周囲、櫓、外された格子に足跡、指紋は残っていない。
干潮前の足跡は満潮により消えた可能性。
ジャケットに赤い繊維。

《犯行の時系列》
12/29 9:00 バスでグリーンヴィルへ
12/29 19:00 会食〜数時間
12/29 23:30 最終バス ※彼女は見なかった
10/30 0:00-2:00 死亡時刻
10/30 死亡事故以降〜始発まで
10/30 始発 バスでグリーンヴィルへ

《メモ》
テイトとカイアは赤い毛糸帽を投げ合う。最後はテイトが手にしたところで終了。チェイスとの接触を避けている最中で事件後はカイアの自宅にあった。また赤い帽子が証拠品として提出された時、公聴席にはテイトの姿はありませんでした。
イタヤ貝のネックレスは旅行先のホテルでカイアからチェイスにプレゼントしたもの。

・雑記・

《カイアの主張》
カイアは容疑を認めません。無罪も死刑も関係なく帰れるならそれでいい。刑務所は嫌で湿地に帰りたいと弁護士にだけ伝えます。
また陪審員を味方につけるのも嫌がります。
私は何もしない勝手に裁けば良い、ただし裁かれるのは彼ら自身。

《警察と検察の主張》
カイアの人間の形成が問題。
湿地での目撃者。
大声がしたから近づくと娘が飛び出して来た
その際に殺すと脅迫していた。
赤い毛糸帽の繊維が洋服に付着。
事件前の夕食まで身につけていたイタヤ貝のネックレスが証拠品にない。
9:00発のバスに乗車した事を確認できても
戻って来る事は出来る。1:30-2:00は店がしまっていて知らないだけ。
同じホテルに泊まらず、バス停に近いスリー・マウンテンに宿泊している。

《弁護士側の証拠》
潮汐書 干潮 10/29 0:00頃
要望書のコピー 外れた格子による死亡事故の可能性を示唆した内容。昨年7月提出分。
あおいことり

あおいことり