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ザリガニの鳴くところのyokoのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.5
crawfishではなくcrawdadsにしたのはdadが入ってるからでは?邪推。

1人で孤独に湿地で生きてきたというが、弁護士、黒人夫婦、テイト、出戻り兄、など優しい人の方が多い印象。あと出版社や役所の人も意外に優しい。学校の先生も普通に扱ってくれた。陪審員も裁判官もまとも。もっと魔女裁判みたいになるって思わなかった?

街の人の対応も別に差別や仲間はずれとは違う、湿地で暮らしてればまあああなるでしょう。嫌な目で見るが卵をぶつけるわけではない。あの暮らしをしていて仲間に入れてクレメンスは少し難しい。

そう主人公の魅力に私たちも、彼女に肩入れする弁護士や黒人のように、「湿地と差別されているが彼女はピュアな女の子きゃわわ」とほだされてしまうように作ってある。

普通、未滞納の税金のくだりとか絶対揉めるやん!て思わなかった?なんか小細工されて払えないとか、チェイスにそこをつかれて立ち退きを要求され〜みたいに。普通にとんとん出版社に話がつきお金払いましたで終わり。

実はそこまで環境はヘビーではない。

ミステリーとしてのトリックはあまりわからないが、彼女は間違いなくやっていて、それは彼女が一回もやってないと弁明してないから。嘘は言わないというのが彼女(湿地)の正義でだが、人殺しは別に湿地の正義を乱すわけではないと思う。

途中思ったのはテイトが街にいけと強引にけしかけるので、彼女がいない隙に、彼女推しのおじさん達と共謀し殺害もあるかなと思ったがラストをみるとそれもなさそうだ。

母や兄妹が家からわざわざでていく描写があるのに父だけない。殺したよね。湿地のルールで。チェイスも同様に。

ラストで殺人を知られたくないから死ぬまで隠してたというお花畑な感想もあったが、どう考えても、あなたよりチェイスの方が好きでした。という意味でしょう。そもそも湿地的感性から言っても生物的に強いのはチェイス。貝殻というより似顔絵。チェイスは性格はアレだけど主人公からは逃げてないのよ。独りよがりなセックスも逆に動物的、湿地的じゃない?

チェイスが結婚してブチギレたのに、テイトには結婚なんていいじゃないツガイよと諭してたのも面白い。結婚はチェイスとだけと思ってたんじゃない。良く解釈するなら自然風のツガイ、人間様の規則には縛られないとも取れるが。

そもそも主人公って死ぬ時独りだったじゃない。テイトに看取られるのを拒否したかのようなボートでの死。ネックレスがどうこうよりこの描写がやっぱテイトが裏切った時点で重要視してなかったんだろうな。  

思いの外、環境がヘビーでなく人々が優しいのは彼女の湿地としてのクレイジーさと対比させるため。例えば凄惨ないじめがありました、嫌がらせがありました、だから立ち向かいましたにしちゃうとただの少年漫画見たくなっちゃうじゃない。

人間社会と関係なく存在している湿地。だから過剰な悪として人間を描かない。

crawDADsが助けてくれ〜と鳴いている湿地で同じようにチェイスを葬った。
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