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ザリガニの鳴くところのヒムロのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.5
1952年、ノースカロライナ州のとある湿地帯。
地元の人間が「ザリガニの鳴くところ」と呼ぶ湿地の奥地の小屋にとある家族が住んでいた。
家族はやがてバラバラになり、6歳の少女カイアだけが残され、それでも懸命に暮らしていた。
時は流れ1969年、地元の裕福な家庭の息子が変死体として発見され、その容疑者としてカイアが法廷に呼ばれる。

昔のアメリカの民族的な話とか全く詳しくないのでこういう背景が実際にある話なのか、それとも今の何かの隠喩に過ぎないのかはちょっと分からなかった。
やっぱり泥もあるし土地も安い貧乏人的なニュアンスなんだろうか。
かなり街全体で湿地の少女は実は狼とか謎の噂が回りまくっているのは古い時代設定ならではかなと。
差別や社会と戦う自立した女性という現代性に溢れるテーマをあえて昔の時代で、そして女性の力だけで戦うわけでは無いところが気に入った。


本作はカイアの回想シーンの合間に現在の時間軸の話が入ってくるという語り手の視点を追体験できる法廷ミステリー的な作品。
とはいえ推理する要素があるかと言われるとそういう話でも無いので、実際はミステリーにカテゴライズされてしまっているがカイアの生き様を描いたドラマ的な側面が強い。

リアルを考えるとこんなことになるかね?と思うような話の運びもあるのだが、変死体で後に見つかるチェイスはやけに生々しいリアルさで好き。
裕福で許嫁がいるけど遊びたい。
湿地の娘はバカにされてるけど結構綺麗だし簡単に手に入れられそう。
って感じで遊んでやろうと思ってたんだろうが、婚約者の事がバレると「許して」「婚約者は家の都合で僕には君が必要なんだ」と女々しく懇願し始める。
遊んでるつもりがめちゃくちゃ夢中になって、それでいて最後にはプライドが邪魔して逆ギレして終わるとかいう。
みんなの周りにも1人ぐらいは居そうなキャラ設定ながら本当に描き方が秀逸だった。

「ザリガニの鳴くところ」とは湿地そのもの、あるいは自然そのものか。
善悪もなく生き残るために誰もが必死で、それでいてあっさりと命が消えることもある。
しかしそれはそれで美しいということを感じさせるラストだった。
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