風来坊

ザリガニの鳴くところの風来坊のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.5
世界的なベストセラーの原作の映画化ですが私は原作は未読です。
「キューティ・ブロンド」で知られるあのリース・ウィザースプーンさんが原作を気に入り早くから映画化に動いていて紆余曲折があってやっと映画化出来たという余談もある作品。

この発言も偏見になってしまうのだろうけど、主人公が湿地で暮らす世捨て人の割には小綺麗で洗練され過ぎているようでちょっと違和感。
あの育ちでもっと世間知らずかと思いきや意外にしっかりしています。
テイトとの絡みも少女時代から間が空き過ぎのような…。あの頃は高校生くらいだろうけど設定と見た目が合わないのですよね…。

しかし…あの劣悪な子供時代の生活環境でよく純に育ちましたよね。私だったらどうしようもないろくでなしになっていると思う(笑)
世界的なミステリー小説が原作と聞いてましたが、映画の方は差別や虐待や偏見を中心に生きづらい時代を生きる女性の人生と愛を描いた人間ドラマな印象。

物語は主人公の回想と裁判を通して語られます。幸せと失望を丁寧に描いていましたがちょっと前置きが長い気も…。
町の人達が裁判でイチイチ悪気なく湿地の娘と言うのが差別を表していて象徴的。

カイアはテイトの面影をチェイス中に探していたのか?
全然、タイプが違うけれど…ここら辺が女性の繊細な気持ちが分からない私には理解が追いつかないです…。

原作者の方は動物学者でもあるので鳥の羽根など象徴的な形で出て来てそれが幻想的な雰囲気を与えてました。湿地の動植物に詳しいという主人公の背景と物語に繋がっていました。でもどこかサラッとしていて、原作ではもっと深堀りしているのですかね。

原作の持つ自然な雰囲気を上手く表現出来ていないというのが、原作が好きな方の意見らしいです。
原作は未読なので比べてどうかは言えませんが、確かに昔の設定のお話とはいえ自然な感じがしませんでした…。

デイジー・エドガー=ジョーンズさんは主人公の純朴さを上手く醸し出しており主人公のキャラクター像に合っていました。
暗い現実や時代の中にも一握りの光というか、良い人が少しはいるのが救いですね。

まあ…男はいつも勝手だなとは思う。現実と男に翻弄される女性を丁寧に描いていて、それをミステリーへと繋げていましたがミステリーとしてはドキドキはせず思っていたのとは違いました。
真実は湿地の中で永遠に眠る…モヤモヤは残る。女性の目線で観ると感じる物がきっと違うのだろうと思います。

あの世界的歌姫のテイラー・スウィフトさんが本作のサントラのために書き下ろしたというエンドロールの曲が物悲しく余韻を感じさせます。
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