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ロストケアのmoeriのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.8
命は誰のもの?

松山ケンイチ演じる介護士の斯波が42人の老人を殺害し、それを長澤まさみ演じる大友検事が追い詰めていく展開。
斯波は、自らの行いは救いであり正義だと主張、大友検事は、生きる権利は誰にも奪えないと主張して平行線をたどる。

どちらが正義かという点で映画は進行するけれど、命は誰のものか?というのが本質なのだと思う。
もちろん自分のものなのだけれど、社会の中で生きている人間にとって、命は自分だけのものではない。
家族のものでもあるし、社会を構成する一員でもあるし、昔仲良かった友人のものかもしれない。
これは仏教の教えにも通ずる考え方だし、よく耳にするようになった人権にも通ずる。
もたらされる死が救い、という考え方はどこから来たんだろう。

つまるところ、他人の命を身勝手な理由や憶測で終わらせてはいけない、というところは揺るぎないのだと思う。たとえ、本人とその家族が過酷な状況に疲弊し絶望していたとしても。

だからこそ穴に落ちた人が再び上がってこれる仕組みが必要なんだけど、現実はままならない。今の世の中、親の介護から逃れられる人は少ないから、否応なく現実をつきつけられる。
そんな堂々巡りをしてしまう、後味悪めの映画でした。

実は初共演だった松山ケンイチさんと長澤まさみさん。また別の作品での共演も楽しみにしています。
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