StormHunter

ロストケアのStormHunterのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
4.5
wowowで。
絶対観た方がいい。傑作!

・あらすじ
ある早朝、民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。死んだ所長が勤めるセンターの介護士・斯波が犯人として浮上するが、彼は心優しい青年だった。検事の大友は、斯波が働く介護センターで老人の死亡率が異様に高いことを突き止める。取調室で斯波は多くの老人の命を奪ったことを認めるが、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張する…。

ものすごく心に響きました。
孤独死、介護疲れといったリアルな社会問題を、限りなく現場に近い目線でストーリー化していて、普遍性のある作品になっていたと思います。
実際こういう問題で苦しんでいる方々は大勢いるだろうし、誰もが当事者になりうる訳ですから、色んな人に観てほしい。意見が聞きたい。
誰の意見もわかるし、重い重いテーマの割に見終わった後の余韻が心地良かった。
今作のポイントはだいたい以下の2つかな。
それぞれについて考えたことを書きます。

[生きるとは、家族とは、絆とは]
僕が子供の頃、祖父母が曾祖父母の介護をしていて、とても辛そうだったのを思い出しました。認知症が進んでいて、徘徊をして行方が分からなくなったこともありました。今作に比べると軽いですが、祖母は幼少の僕にも分かる程疲れていました。結局介護施設に行くことになり、負担は減りましたが、相当な労力だったと思います。

今こうして大人になっても、自分の母親がそうなった時、介護に耐えられるかは分からないです。きっと出来ないです。ですが挑戦してみる義務が自分にはある。シングルマザーで働きながら色々やってくれたんで、そのぶんね。

自分はまだ若いですから、老いた時にどうするか、考えた事もないです。ただし、脳と心臓が動いているだけの状態を、生きているとは呼びたくない。何でもいいから思考し行動し続けることや、誰かに必要とされることがあるから生きたいです。
自分の力でご飯が食べられなくなったり、家族の顔を忘れたりしたら、自分は生を諦めるつもりです。でも自分で死ぬのはきっとできない。だから誰かに迷惑をかけることになる。
そうすると今作のように、絆は呪縛にもなり得る。
その代わりどんなにボケても、寝たきりになっても、愛する人や自分の為に動いてくれる人に感謝するだけのエネルギーくらいは残しておきたい。

[司法=善悪なのか]
司法はあくまで、罪かどうかを決める基準に過ぎないのでしょう。善悪に100%は存在しないんだろうなぁ。今作のケースも殺人罪は事実だけど、それが救いの手であったのも事実。
"社会の穴"に落ちた当事者たちの外から、"安全地帯"からの正誤判定もエゴだろうし。
同様に当事者による殺人の正当化もまたエゴだろうし。
我々は自分が正しいと考えたい生き物だから。必ず食い違う。
究極、法律だからとしか言えません。

そういう人間模様を凄く繊細に映し出していたし、ストーリーが完成されていたので、嫌味が無かったです。

余談になりますが、僕は安楽死や尊厳死に対して肯定的な思考を持っています。自分に対しても、自分の家族に対しても。我々が生命活動を続けること自体に意味はないと思っているからです。幸いにも脳と心臓が動いてるんだから、生きなければ。活きなければ。

色々書きましたが、今作はとても社会性があって、メッセージのこもった作品でしたし、素晴らしい哲学があったと思います。

大好きな映画です。
是非見てみてください✅
StormHunter

StormHunter