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恋する惑星 4Kレストア版のazusaのレビュー・感想・評価

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)
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数年毎に観ているが、何度観ても全く色褪せることがない。無国籍で混沌とした何物にも代えられない90年代の香港。あの唯一無二の雰囲気を永遠に封じ込めたタイムカプセルのような作品だ。本作始め、ウォンカーウァイ監督のその時代の雰囲気を閉じ込めたような作風が大好き。台詞も登場人物がその時浮かんだであろう思いをぽつりぽつりと語るに留める。にもかかわらず、その少ない言葉で絶えず心動かされるから不思議だ。その時自分がどういう心境かによって見方が変わる気がする。先日観た「海がきこえる」と同じく夏が待ち遠しくなった。パインを食べるピュアなモウ、最強にアイコニックなフェイ、そして制服姿がバチクソにかっこいい663番…登場人物がこんなに粒揃いな作品も稀有だろう。選曲も使い所もセンスが冴えまくっていて、一度観たら忘れられない。663番がフェイを見つめる目が大好き。演じるトニーレオンは演技なのか素なのか、じっと見つめる視線の色気よ。あんな視線で見つめられたら心臓が鼓動を止めてしまう。ブリーフだったり、デートに着ていくシャツがダサかったりするところに逆に663番の人間臭さを感じる。「どこに行きたい?」「君の行きたいところへ」この会話がまた最高で、もはやプロポーズに匹敵する愛情表現ではないだろうか。「恋する惑星」、よくぞこの邦題にしたと思う。おこがましいが、名付けた方は本作の趣旨を本当によく理解されていると思う。また数年経ったら帰ってきたい、あの香港に。
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