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ゴッドランド/GODLANDのazusaのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
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「神の島」というよりもこの島自体が神の化身、そう感じた。教会を建てる使命からアイスランドを横断するルーカスだがその過程は過酷を極め、そしていつしか牧師としての尊厳よりも人間味が勝るようになる。むき出しの大地にはただただ圧倒され筆舌に尽くしがたい美しさを持つけれども、同時に人間の命など音もなく一瞬で飲み込んでしまう絶対的な存在感が恐ろしくもあり、いつしか神とは一体何だっただろうかと観ながら自問していた。"神"の前で人間はいかに小さな存在か、人間が創り出したものの脆さを常に訴えてくる。ここではルーカスの「神」でさえも単なる人間の創作物に成り下がる。淡々として素朴な人間ドラマの背景に常に壮大な神の一部が映ることによって、惑う人間との対比がなされる。しかし厳しさだけを突き付けるのではなく、過酷な環境ながらそこに住まう虫の鳴き声や鳥、魚など人間以外の生物の存在が救いだった。そして馬の死骸が土に還っていく様子も。あらゆる生命は土から生まれ、そしていずれ土に還る。人間も同様だ。イーダが言うように、花と草が覆って土に還してくれる。作中ではイーダに一番共感した。雄鶏はこの雌鳥が好きだったとか、絞めるときに鶏の目を覆うところとか。
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