Uえい

天使の涙 4Kレストア版のUえいのレビュー・感想・評価

天使の涙 4Kレストア版(1995年製作の映画)
3.5
前作「恋する惑星」のオムニバスの一編になるはずだった作品で、前作同様、当時の香港を舞台に、前半後半で異なる二組の男女の恋模様を描いている。

前半はコンビで殺し屋をしている男女が描かれる。二人は同じマンションに住んでいるが顔を合わせず、女が仕事をセッティングし、男が実行する。ノワール感と女(ミシェル・リー)の妖艶さも合わさってディープで猥雑な雰囲気が漂う。

突然男が殺し屋を辞めるが、女は男に一方的に恋心を持ってしまっていた。男は雨の日に、変な女(カレン・モク)に言い寄られる。この女が、いわば不思議ちゃんで、「恋する惑星」でブリジット・リンが演じた女と似ている位置付けだった。雨が印象的で、香港のネオン街と相まって「ブレードランナー」の様な雰囲気だった。

後半は殺し屋が住むマンションの管理人の息子(金城武)が主人公だ。刑務所から脱走している様子で、夜な夜な、肉屋やアイス屋に侵入し、勝手に商売をしていた。豚に跨ってマッサージしたり、家族にアイスを押し売りしたり、変だけど印象に残るシーンが多い。そしてある日、失恋してしまった女と出会い、一目惚れする。

管理人の息子が父親をビデオカメラで撮るシーンが忘れられない。全体的に引きの画が少ないのと、モノローグが混じり、周りが見えていない感覚、目の前に精一杯な感覚が伝わってくる。そして、やり過ぎなくらいエモいカメラワーク、ハイスピード撮影が合わさり、ついつい没入してしまう。そんな雰囲気の中で描かれる男女のピュアな恋心は宝石の様に輝いて尊い。
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