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2046 4Kレストア版のYKのネタバレレビュー・内容・結末

2046 4Kレストア版(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ウォン・カーウァイは数字にこだわってきた監督だ。『恋する惑星』の名モノローグ「その時、彼女との距離は0.5ミリー57時間後、僕は彼女に恋をした」のほか、『2046』の前日譚とも呼ばれる『欲望の翼』の「1960年4月16日3時1分前、君は僕といた。この1分を忘れない」というロマンチックなセリフが有名だ。本作では、タイトルそのものが数字。「2046」というのは、香港人にとって極めて重要な数字だという。1997年に香港がイギリスから中国へ返還されてから、丸50年経つのが2046年。現在の香港は、中国の一国二制度というシステムのなかで、「返還後50年は従来の制度が維持される」という約束のもと一定の自治を認められている。しかしそれも終わりを迎え、中国の完全な社会主義下に置かれるのが2047年。「2046」というのは、今の香港が今のままでいられる最後の年を示す数字ということになる。

とはいえ、本作の舞台は『花様年華』に続く1960年代の香港。返還と「50年不変」を定めた1984年の英中共同声明より20年も前の話である。劇中での「2046」は、ホテルの部屋番号だ。トニー・レオン演じる作家のチャウは、最初2046号室を希望するが、タイミング悪く隣の2047号室に案内される。その後2046号室に入ってきたのがバイ・リンという女で、2人は夜ごと共に過ごすようになる。「2047」の部屋から「2046」の部屋を覗くようにして、実はチャウは、『花様年華』で出会い別れた「チャン」をバイ・リンに求めていた。その後、様々な女性と関係を持ちながら、チャウは『2046』そして『2047』という小説を書き始める。それはあくまで部屋番号からとった恋愛SF小説だが、1960年代という「過去」から、2046年という「現在」と2047年という「未来」を見るメタファーになっているのだ。

『2046』は、これまでの作品と比べてもかなり複雑な映画。CGパートや空想パートがとっつきにくい感もあり、他の作品と比べると人気は少し下がる。ただ、これ以降ウォン・カーウァイは香港の映画をまともに撮っていない。この先の香港のすべてをこの映画に閉じ込めたような、それくらいの感じがした。
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