映画好きの柴犬

東京2020オリンピック SIDE:Bの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)
3.9
コロナに翻弄された証

 東京2020オリンピックを非アスリートサイドから追った公式ドキュメンタリー

 SIDE:Bは文字通り裏面なんだけど、それは裏方であるスタッフサイドという意味と、メディアに乗らない裏側という意味もあるのかな。報道やSNSで見かける情報ではない、現場の生の情報をかなりニュートラルに出しているような印象を受けた。森さん、バッハ会長、橋本聖子さんら、色々と批判された人たちも、それらとは違う一面を見られたのは良かった。

 でも、全体から受ける印象は「混沌」。このオリンピックは誰のためのもので、どういう大会にしたかったのかの方向性が全く見えてこない。復興五輪やコロナに打ち勝った証というお題目は、開催の大義名分であって、大会の中身を規定するものではない。

 結局、組織委員会が方向性を示してそれを実現していくという体制にはなっていなかったし、山口香さんの言葉を借りれば「チーム森になっていなかった」ということだろう。森さんには過去の実績に基づく人望はあっても、未来に向かうビジョンはなく、それが不用意な発言の数々につながったのだろうし、組織委の中にもそれをサポートしまとめ上げる参謀のような人もいなかった。野村萬斎さんのようにビジョンを持った人はいたかもしれないが、個々の利害が優先された。組織委には、とにかく開催するという実績をつくり、そこで生まれる利権を分配するだけという役割しか見えてこない。アスリートや観客(結局無観客になってはしまったが)のことを第一に考える、現場の人たちの力で、なんとか問題なく実施できたように見えてしまう。

 これって、今の日本の状況そのままだよね。大丈夫か、日本。