かたゆき

マルセル 靴をはいた小さな貝のかたゆきのレビュー・感想・評価

3.5
「皆さん、はじめまして。僕の名前はマルセル。君たち人間からしたらとっても小さな存在だと思うけど、ちゃんとここに居るよ。見ての通り、僕の身体は貝殻。でも、ちゃんと靴は履いてる。僕が住んでるこの家には、僕の仲間の貝殻たちが20匹もいたんだ。でも、色々あって今はもう2匹しかいない。僕とお祖母ちゃんのコニー。もちろん寂しいけど、何とか暮らしてる。でもね、やっぱり僕は家族のことが心配なんだ」――。
短期滞在型のゲストハウスに越してきたアマチュア映画作家のディーンは、そんな小さな貝殻であるマルセルと出会う。
こいつはなんてユニークなんだと彼の映像を動画に撮り、ネットにアップしてみると案の定、彼の存在は瞬く間に評判を呼び、再生回数はうなぎ上り。
マルセルは一躍人気者となるのだった。
テレビや雑誌から取材依頼が殺到、彼を一目見ようと遠くからたくさんの人たちがやってくることに。
でも、マルセルはやっぱり居なくなった仲間のことが心配で仕方ない。
彼は、前住人の荷物に紛れて連れ去られてしまった仲間たちを捜しに行こうとディーンに提案する。
そんな折、お祖母ちゃんが棚から落ちて大怪我をしてしまい……。
靴を履いた小さな貝殻であるマルセルの日常と冒険を、実写とストップモーションを組み合わせて描いたアニメーション。

とにかくこのユニークな発想となんとも言えないほのぼのとした雰囲気が終始心地良い作品でしたね、これ。
まぁNHKのEテレなんかでよくある5分程度のパペットアニメを引き延ばして映画にしただけという気がしなくもないですが、自分はこーゆー独自の世界観、嫌いじゃない。
なにより主人公であるマルセルの声が良いんですよね~。
声変わり間近の男の子って感じのこのたどたどしい喋り方がなんとも愛らしくて、思わずぎゅっとしたくなってしまいます(実際にしたらぶちゅっと潰れるだろうけど!笑)。

また、終始ほのぼのしてるだけじゃなくて、この貝殻から見た人間世界がどこか歪んでるのもシニカルで大変グッド。
マルセルが家族を捜したいって訴えてるのに動画を見た視聴者はただ面白がって家に押しかけて不法侵入するだけだったり、人間カップルが常に怒鳴り合いの大喧嘩してたり離婚調停中だったりと現実的なのがこのふわふわとした物語に深みを与えている。

そして、怪我が原因で体調を崩してしまったお祖母ちゃん貝殻。
彼女が孫のマルセルの為に必死に元気な姿を装おうとするとこなんかジーンときちゃいますね(多少あざとさは感じるけども!笑)。
そして最後は見つかった20匹の様々な貝殻たちとパーティーして大団円。
さすがにこんなに動く貝殻が居ると気持ち悪……、いや感動的でした。
うん、なかなか個性的で面白かった!
かたゆき

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