るるびっち

犬も食わねどチャーリーは笑うのるるびっちのレビュー・感想・評価

3.3
前半はすごく面白い。
旦那デスノートという、背中から容赦なく刺してくる妻の攻撃が意表を突くし、夫にとっては平和に見えていた世界が一転する。
異世界に放り込まれた位の衝撃で面白い。
しかし、それは出オチみたいなものだ。
旦那デスノートの衝撃の面白さが済むと、あとは退屈な夫婦物。
いつの間にかすれ違った夫婦の溝を、どう埋めていくかというお定まりのコース。

後輩の結婚式のスピーチで、夫のキャラを活かしホームセンターの備品を宣伝してる内に、忘れていた夫婦の生活の絆に結びつく。
手堅く伏線回収して上手く纏めているが、平凡で詰らない。
「マジメか!」と、タカトシ風にツッコミたい。
しかも、それを二度もやる。
一旦纏まるが、再び夫への信頼を損ねて妻は出て行く。
またしてもホームセンターの備品「ふんばりくん」を見て、
俺がもっとふんばらなきゃと、妻と思いのたけを互いに言い合う。
ホームセンター伏線回収を二回もやって、元さや展開。
芸がない。持ちネタが一つしかない芸人みたいだ。

クライマックスに、互いの思いを長々台詞で説明するのも良くない。
それはテレビドラマの手法。
テレビドラマは家事をしながら片手間に見ても解るように、台詞で状況も心理も説明する。画面を見なくても一応解る作りなのだ。
その悪影響で、映画もテレビドラマ風に書く人が増えた。

むしろ逆に、妻の攻撃を喰らった夫が失語症になり何も喋れなくなれば良い。
妻は夫の本心や言いたいことを、必然的に考える羽目になる。夫の気持ちを代弁せざる負えなくなる。
すると、夫の立場で物を考えはじめる。
夫側も妻が辞めた『旦那デスノート』にコメントが沢山来ているので、反論のつもりで返事したら再開依頼が山の様に来る。
仕方なく、妻に成り済まして夫(自分)の悪口を書く。
自虐ネタ的だが、受けて絶賛されるのでつい書いてしまう。
せめて妻より面白く書こうと、ねじれたプライドで一生懸命書いている内に、妻の目線で自分を見詰め直す。
(自分の悪口を書くなんて矛盾しているが、人間は矛盾した生き物だ)
互いに相手の目線で見詰め直し、夫婦のズレを解消する。
そしたら、クライマックスで長々台詞で心情吐露しなくても済む。
工夫が足りないアイデアがない、長台詞で心情を説明するのは芸がない証拠だ。学生演劇じゃないんだから。

創作だから、そんなバカなと意表を突く展開で面白く解決して欲しい。
『夫婦円満の秘訣』を真面目に紹介してもらう必要はない。
啓発本を読んでいるのではなく、娯楽映画を見に来てるのだから。
「マジメか!」
るるびっち

るるびっち