328

リバー、流れないでよの328のレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.0
2分間のタイムループネタ一手で構築された映画。ループ中は全て2分間のワンカットシーンにより繋がれています。タイムループに入る前は、やたらズームの多いカメラワークだなぁと思っていましたが、その準備か名残なのでしょうか。

ひたすらワンカット繰り返しとなると、途中(おそらく30分程経過したあたり)で「これは飽きてしまうかも」と不安になりました(そして何故か「カメラを止めるな!」が脳裏を過りました)。
しかし、その思いは杞憂となります。中盤でややうんざりしかけるものの後半でゆるりと盛り返してくれました。中盤のうんざり、は登場人物たちの心情と重なるところもあったのでそれはそれで感情移入のフックとなり良かったです。

後半の盛り返し要素として、まず俳優陣たちの飽きない演技と憎めないキャラクター設定があります。特に主役のミコト役の女性、ところどころ癇に障りそうな行動があるものの、表情や佇まいから嫌悪感とは程遠い存在でした。他のキャラクターたちも嫌になりそうな時に他の人物がフォローしているかのようで「見ていて嫌になる」ことを逃れ続けます。なんか演出にチームワークの良さを感じました。

もうひとつ飽きない要素として、タイムループという設定そのものとキャラクターたちの状況や将来における悩みや葛藤とリンクしており、それ自体が映画のメッセージとなっていることです。
ポジティブ、ネガティヴ問わず「今が続けば良いのに」という想いへのアンチテーゼ的なメッセージが押し付けがましくなく、タイムループという(物語の中では)不可避な出来事により否応なくその状況下に置かれてしまう苦しみが、前にしか進まないという「時間」の絶対性との折り合いの付け方を指南してくれる。「それはもう仕方がないんだから、苦しむことはできるだけ避けて、朗らかに暖かく明るく付き合おう」という姿勢。
大袈裟かもしれないけれど、そう思えました。

あと、音楽がすごく良かったです。くるりなのかと思ったらくるりでした。

テーマ 4.0
画 4.0
ストーリー 3.8
キャラクター 4.0
音楽 4.2
豊かさ 3.9
328

328