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EO イーオーのbennoのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.7
イエジー・スコリモフスキ監督作品…4作品目

物言わぬロバを主人公にしたロバムービーで且つロードムービー


サーカス団で心優しいカサンドラという相棒の少女に深い愛情を注がれるロバのEO

しかし動物愛護を理由にサーカス団から引き離されカサンドラとも離れ離れに…


今作は動物愛護団体に接したことでEOの受難が始まるという皮肉な風刺作品

動物を愛し護ることが目的のはずなのに…保護を行ったあとは無関心…偽善も甚だしく怒りが込み上げます

その後の旅路の先々で暴力と愛に翻弄されても、常に無表情で無垢な目をしたEO…人間の身勝手さがいっそう腹立たしい…

そしてEOの内面に浮かぶ心象のような光景…随所に現れる真っ赤に染まったシーン…それはサーカスの赤??…ただひたすらカサンドラに、会いたかったのかなぁ…



今作は筋立ったストーリーはありません…セリフも極端に少なく、ミハウ・ディメクの美しい映像とパヴェウ・ムィキェティンの陶酔的な音楽が語りかけます…出来ればヘッドセット案件

EOの繊細な瞳に映し出される断片的な映像…そこから喜びや悲しみ、不安や恐怖…そして諦めなどの感情が自然に伝わってきます

また、シンメトリーや俯瞰を多用した構図に逆光を上手く取り入れた煌めく映像は魔法にかけられたような美しさ…

1番好きなシーンは轟音を立てて放水するダムを背景に橋の上に立つEO…恐ろしく美しいシンメトリー…そこで逆再生になる水流は時間を戻したかったのでしょうか…?

終盤、司祭のもとに辿り着くEOは運命的なのか…そして突如登場するイザベル・ユペールにはビックリ…オーラを放ってます


   害獣として駆除される狐…
   肉になって食べられる牛…
   サラミになるロバ…

悲しいことですが、綺麗事では無く…
それが生き物にとってのあるべき姿…


今作はスコリモフスキ監督が唯一泣いたというブレッソン監督の『バルタザールどこへ行く』にインスパイアされた作品だそうです


『バルタザール〰︎』はあくまでもロバは主役ではなく、それに関わる人間模様…多少宗教色のある寓話的なものに昇華された作品…衝撃的なシーンもありますが大好きな作品です…ෆ*
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