Dantalian

別れる決心のDantalianのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.8
「あなたみたいな良い男は私とは一緒になってくれない」って真実すぎるわ
警察官夫婦は一人が科学のエリート、一人が警官のエリート。トップ大学のサークルで出会った可能性も、親同士の繋がりで幼馴染の可能性も。出会いはどこであれ、彼らは尊敬すべく階級の中の人間で、どっちも公務員なので国家というものに依存して生活し、そのメリットを享受してきた人間。
それに対してソレにとって国家というものは絶えず暴力と脅威そのものだった。彼女の人生もある程度推測できる。東北地方の小さな町の出身で、母親の介護が生活の中心、でも美貌のせいで絶えず男たちから嫌がらせを受けてきただろうーーもちろん大した男は一人もいなかった。
「なんであんな男と結婚したの?」と聞くことが一番残酷。仕事でどんなに下劣な男も見てきたのに、結婚においてもその他のあらゆることにおいても階級の絶対的な制限の存在すら気づいていないのか。
美貌がなければ、DV魔の底辺の公務員や詐欺師すらも目を向けてくれなかっただろう。

品があることは、誇りから来ていると言うが、むしろ仕事に対して誇りを持てるのは、仕事を完全に冷静に客観視できているからだと思う。つまり警官としてどんな暴力と罪悪を見ても、それを「自分の社会的地位、自分のプライベート生活」とは完全に関係のない「対象物」として見てきたからではないか。「崩壊」はまさに、ある観察対象としての被疑者に対して感情を持って接する瞬間、社会の闇も暴力も自分と関係のないものとして存在し得なくなるからではないか。
そのようにナイーブでいられなくなった彼は、ナイーブであり続け、そしてそれを幸せだと思っている妻に向ける眼差しは同じでいられるか?
4回刺された部下はそれ以降登場しなくなったが、死んだということだろうか?しかしヘジュン含めて警察の誰かが彼を言及することはあったのだろうか?
ロマンスと言ったら、ヘジュン以外の全員に不公平すぎる。ロマンスではなく、ヘジュンの職業(特に彼は期待されているエリートだから)とその職業に対する幻想とその社会的ステータスを保全するために、全員犠牲になる話の方が筋が通る。

ヘジュンの妻がよく話しているイ主任が男だったことを最後に知るが、それを一度も聞くがなかったことから、妻へのネグレクトがよくわかる。おそらく妻も、イ主任を頻繁に話していたのは夫を試すためだっただろう。それほど心が離れているのに、最後あの質問するのは、つまり彼はまだ妻が経験していた孤独と苦痛すら気付いていないということだろう。

ヘジュンの自動音声翻訳は男の声だった。
ソレのは女の声だった。
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