フクイヒロシ

CLOSE/クロースのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.5
「男らしさへの期待」

是枝監督の『怪物』的なものかと思って、好評は聞いていたものの、二の足を踏んでおりました。

LGBTQ+イシューというよりは〝男性性〟の方がテーマのようですね。

以下のインタビューで監督は「男らしさへの期待」という言葉を使っておられます。

気鋭の映画監督ルーカス・ドンが『CLOSE/クロース』で掘り下げた“男の生きづらさ” - WIREDhttps://wired.jp/article/close-lukas-dhont-interview/

「男は男らしく!」って言われた時に、女子同士でなら許される同性同士の距離感が男子だと許されなくなってくる。(そこにはもちろん同性愛嫌悪という下地があるからこそなのでセクマイイシューでもある)

そうじゃないと輪から外されてしまう。

この映画だと本当に〝輪〟を形成してました。校庭で喋ってるだけでもいちいち〝輪〟。ボール遊びでも〝輪〟。

必死にその〝輪〟の円周にいようとするレオの姿が辛いんだけど、確かにああいう場面は学生生活の中ではマジでたくさんありましたね。。。

一方、レミはその謎の〝輪〟に入るか入らないかについては気にしていないようでした。ただレオからの拒絶が悲しかったのでしょう。

レミもなぜレオが自分と距離を置こうとしているのかはわかっていたと思うんです。レミは「期待される男性性」に応えようとする男の子ではなかったようですが、世の中には「期待される男性性」ってものがありそれに応えられないとハブられるっていうのは、レミも気づいてはいたと思います。

「それを理由に僕を拒絶するの…??今までのは何だったの??」という悲しさだったのかなと。***

映画は現実社会の鏡でして。

女性やセクシュアルマイノリティの権利の平等化が進む中でヘテロ男性が「自分を省みる」という作業を現実社会で行われていると思います。

脚本家の坂元 裕二が『怪物』で、ルーカス・ドンが『CLOSE/クロース』で、過去の自分を省みる作品を作っている。

ちょっと毛色は違うけど『パリタクシー』もそうだと思っていて、女の〝長い〟話をおじさんが聞き続けるという構造で最初から最後まで貫いた映画はとても珍しいし、その女性の話っていうのも「有害な男性性に苦しめられた半生」な訳で、それをおじさんがずっと聞き続けるってのはやはりそこには「男の反省」があるだろうし、そもそもこのタクシー運転手(ダニー・ブーン)は有害な男性性はあまり感じられない人物像になっていた。

で、話ちょっとそれますけど、2020年のドキュメンタリー映画『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』では、ゲイ男性も批判の対象になっています。ゲイっつっても所詮は男。ヘテロ男性が社会の変化の中で反省すべきターンに来ているなら、ゲイ男性も同じ。

ネットフリックスの『シングル・アゲイン』では、ゲイの中年男性とシニア女性が友人になってお互い似たような境遇であると笑い合うけどシニア女性はゲイ中年男性に「でもあなたは男よ」と釘を刺す。

***

ラストネタバレはコメント欄に。。