舞帝

私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスターの舞帝のレビュー・感想・評価

3.9
長年にわたる確執を抱えた姉弟が、とある出来事を切欠に関係を修復していく物語。

兄弟というのは不思議な関係だ。幼い頃は一番身近な友人であり、そして他人でもある。生まれながらにヒエラルキーが歴然と存在するが、それでいて簡単に言葉には出来ない感情を互いに持っている。
親は平等に接し育てているつもりでも。

アリスとルイの姉弟の関係が変化した直接的な原因は不明(あるいは本当に取るに足らないような些細な感情の縺れ)だが、その蟠りは冒頭の甥の死で噴出し、修復不可能ではないかと思わせるほどに破綻し、憎悪に近い関係になる。
彼らを取り巻く人間関係も複雑だ。アリスの夫とルイは元々は友人だったし、アリスの息子はルイを好いているし、姉弟の両親も一見穏やかな老夫婦のようで、その実情には何らかの影がちらつく。
見方によっては彼らは異母兄弟だったとも、近親姦の関係があったとも見ることができる。

とはいえ自分は、何気ないすれ違いが生んだ確執が、何気ない会話で和解し、互いを、ひいては自分を見つめ直す軽快な展開が好きだ。こういうものなのだ。兄弟というものは。

”他人であって他人ではない”、特別な関係性を情感豊かに描いていて、兄弟姉妹を持つ者として、大いに考えさせられる映画だった。
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