青眼の白龍

ゴールデンカムイの青眼の白龍のレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
3.8
野田サトル氏による同名人気漫画の実写化。監督はHiGH&LOW シリーズの久保茂昭氏、脚本は『キングダム』『ONE PIECE FILM RED』の黒岩勉氏が手掛けている。映画では単行本3巻までの内容が映像化されており、良くも悪くも“壮大な物語の序章”といった印象。漫画の密度を2時間の尺にまとめられるか不安だったが、脚本が上手くトリミングされているため実写化にありがちなダイジェスト感は気にならなかった。物語は原作を忠実に再現しており、映画オリジナルの脱獄囚や杉元とアシリパの恋愛描写といった不快な要素が一切ないのは高評価。公開前から指摘されていた衣装の綺麗さ(特に主演ふたり)が少々気になったものの、そこにさえ慣れてしまえば原作ファンでも十分楽しめる出来だ。『るろうに剣心』や『岸辺露伴は動かない』と同様、実写化に成功した稀有な例と言えるだろう。
キャスティングに関しても文句なし。特にネットで話題になった舘ひろしと玉木宏の存在感は一見の価値がある(額から変な汁を垂らす玉木宏が見られるのはゴールデンカムイだけ!)一方、原作序盤の実写化なので仕方ないが、土方や谷垣、尾形など大半の重要キャラクターは顔見せ程度の出演に留まっている。おそらく続編が作られると思うので、彼らの今後の活躍に期待したい。余談だが、本作で最も原作再現度が高いのはアシリパのフチ(祖母)役の女性だろう。一体どこで見つけてきたんだ……

以上、原作ファンの立場から肯定的な意見を述べてきたが、では漫画未読の観客は楽しめないのかと言うとそうでもない。序章とはいえ本作だけで一応内容はまとまっているし、“杉元とアシリパの出会いと旅立ちの物語”として見れば締め方も悪くない。ただ、何も知らずに完結した映画を期待して観に行くと「金塊の行方は?」「最後に出てきたの誰?」と様々な疑問を残したまま映画館を出ることになりそうだ(これも仕方ないことだが……)。
『ゴールデンカムイ』の序盤は比較的実写と相性が良さそうだが、物語が進むにつれてギャグ漫画らしい異常者──もとい奇妙な人物が数多く登場する。そのまま映像化すると一気にリアリティが損なわれるので、どう実写に落とし込むかが勝負所だろう。