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インランド・エンパイアの盆栽のレビュー・感想・評価

インランド・エンパイア(2006年製作の映画)
3.6
リンチ・ワールド、ついに極限の最難関へ


 デヴィッド・リンチ監督による長編10作目にして現状リンチ最後の長編映画。今まで散々観客を狂気と不条理のドン底に突き落とし、頭を錯乱させてきたリンチですが、今回はあまりにも度が過ぎている。というもの、脚本ですら完成されていない状況で撮影が始まり、リンチが好きなタイミングでキャストを呼んで撮影していったそう。
 なにが目的なのか、なにを描きたいのかが誰にもキャストでさえ分からないまま物語は3時間続く不条理の最高峰へ。誰か助けてくれ。

 本作には数々の謎や伏線が散りばめられています。
ウサギ家族の意味は?
『暗い明日の空の上で』のタイトルに込められた意味は?
スミシー家(数字の10)とは一体?
オリジナル版のタイトル『47』と終盤に出てくる47号室の関連性は?
なぜオリジナル版の主演2人は殺された?
などなど。
 本作は本編として流れている映像が、主人公たちが出演している映画の撮影風景にも見えてしまうから余計混乱してしまいます。つまり、今観ている映像は現実なのか虚構(映画)なのかを問う作品。個人的に頑張っていくつか考えはまとまりましたが、これが答えだなんて到底思えない。ひとつだけ言えるのは、序盤に出てくる隣人の存在がキーになっていると思います。
隣人の言葉
「男子は分身→悪魔。女子はマーケットで迷子→裏路地→宮殿」
この言葉がなにか大きな意味を持っているのでは?

 結論、他のリンチ作品は初見殺しだけど何回も観ることで理解できる系が多いですが、本作は何回観ようと答えはまとまらないかもしれません。3時間もの不条理な世界を観続けることだけでも苦痛なのに。ですが観終わった後に残るのは「やっぱりリンチは凄い」の一言。また彼の長編映画が観たい。

2024.3.17 初鑑賞
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