天パのT

希望と絶望 その涙を誰も知らないの天パのTのレビュー・感想・評価

4.0
【日向坂46ドキュメンタリー第2弾】
上映館数が少なく、イオンモール幕張新都心に連れて行ってもらって鑑賞してきた。
さて、本作は2020年に公開された日向坂46ドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』に続く、第2弾のドキュメンタリー作品。これを"映画"として捉えるのはどうなんだろうと思いつつ、ただあのライブ映像を迫力ある音響で観られるのは映画ならではだし、推しを巨大スクリーンで観られるわけだから、ファンからしたら映画にした意味はそれだけでも感じられよう。

【コロナ禍の苦悩と、東京ドームに至るまでが中心である】
映画の作りとしては、前作の正当な続編とも言えよう。前作『3年目のデビュー』はけやき坂46から日向坂46になって、念願の東京ドーム公演が決まるまでを追ったものだった。これは3月に行った東京ドームライブの感想でも触れたが、結局前作『3年目のデビュー』は東京ドーム公演が決まったところ(2019年12月、2020年12月に東京ドーム公演を行うことが発表された)でめでたしめだたし的に終わったものの、その後その東京ドーム公演はコロナの影響で無観客ライブに変更になってしまった。その結果、1年後の2021年12月のライブまで東京ドームはおあずけとなったのだが、これまたコロナの影響で幕張メッセ公演に変更になった後、2022年3月末に三度目の正直で東京ドーム公演が実現されたのだ。本作は、時系列的には、2019年12月に東京ドーム公演が発表されてから実際に2022年3月に公演を実現させるまでを扱っている。そんなこんなで、映像作品として2本を連続的に見るのは良いと思うが、本作を日向坂46を全く知らない人が鑑賞するのは、単体作品としては説明不足すぎるのでやめた方が良い。

【『希望と絶望』というより『エピソード・オブ・ミホワタナベ』】
「東京ドーム公演が発表されてから実現に至るまで」がメインと言ったが、大部分を、先日卒業セレモニーを行った渡邉美穂まわりの映像に焦点を当てているように感じた。この2年間のドラマチックな部分は、やっとの思いで東京ドームを実現したものの、(当時はまだ卒業を発表していなかったが)渡邉美穂が有終の美として全員で東京ドームを実現させる希望を持っていたにも関わらず、直前で濱岸ひよりがコロナになって全員での東京ドームが叶わなかった、というところにあるだろう。そんなつい最近の出来事にもだいぶ時間を割いて触れているし、インタビュー映像では渡邉美穂自身が卒業することを前提に2年間を振り返っている。
また、キャプテンの佐々木久美が映画の最初と最後にも言っていた「自分たちのことを物語のように美化して映画にされることは望んでいない」という言葉よろしく、中途半端に「こんな頑張ってきた彼女たちが、叶わなかったこともあるけど、できる限りの形で夢を叶えました!」という美談に作り上げることは避けているように感じた。その姿勢は好意的に捉えているが、苦労・努力にフォーカスするというよりも、生じた事実を時系列順に淡々と追っていくような作りになっていることに特徴があるともいえる。そういう意味でも、良くも悪くも映画的ではない。

【そこにある"物語性"とは】
美談にされたくないというキャプテンの思いはあるが、映画として世に出す以上、そこにある物語性は、否応なしに東京ドーム公演を実現させるまで紆余曲折あったことに求められる。更に、この2年間は、有観客ライブがあまりできなかったこともさることながら、メンバーの体調不良が続きなかなか全員揃ってのライブを実現できず、結局東京ドーム公演も全員では実現できなかったという事実も添えておこう。
ただ、個人的には、それ以上に物語性を拾ったというか、印象的に感じた文脈があった。それは、昨年の真夏の屋外ライブ(富士急でのW-keyaki fes)でメンバーにとっては心無い言葉をスタッフから浴びせられた後のことだ。加藤史帆もキャプテンもスタッフがいないところでブチギレてたのがインパクトあった。
スタッフの配慮の無さも目に余るが、自分的には「どちらの気持ちもわかるな〜…」なんて思いながら見ていた。ただ、ハッとさせられたのはその後だ。
続いて秋に行われた全国ツアーでもキツイ要求をスタッフから受ける中、段々とメンバーが団結していって回を経るごとにライブの質を上げていったのだ。その過程について語ったキャプテンの言葉が素晴らしかった。それはつまり、「メンバーがバラバラと不満を言うだけではそれは単なる文句になる。きちんと意見をまとめて、自分のような代表者が冷静に話しに行けば、スタッフも話しを聴いてくれるようになる。結果、そこから公演の内容も改善されていったし、メンバーもライブを楽しめるようになった。」ということだ。
これ社会人も絶対に必要な姿勢だけど、なかなかできないことよね。(スタッフ側の言葉も良くは無いが)メンバー側も「こいつらは何もわかっていない」という態度で次のライブに臨んだわけだが、状況を改善するには感情に任せるのではなく、必要な部分は譲歩しながら相手に歩み寄って成果に繋げる必要がある。それを、アイドルが気づいて行動に移したところが泣けたわ。おじさん。
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