鶏

1秒先の彼の鶏のレビュー・感想・評価

1秒先の彼(2023年製作の映画)
2.8
2020年に台湾で封切られ、日本でも翌年公開された「1秒先の彼女」のリメイクでした。原作の主人公の男女を入れ替えた点や、舞台を台湾から京都に持ってきた点などが主な変更点らしいです(原作を観ていないので詳細な相違点は不明)。ただ、京都が舞台であること、ラブコメディであること、時空の歪みがポイントとなるSFであることなどの要素に着目すると、6月に封切られ、現在も絶賛公開中の「リバー、流れないでよ」との形式的な共通点が結構ありました。ただ「リバー、流れないでよ」の舞台が、京都の貴船地区限定だったのに対して、本作は京都市内洛中を中心に、北は天橋立から南は宇治までの広範囲を舞台にしており、雰囲気的には全く異なる作品でした。

内容的には、岡田将生演ずる主人公・ハジメの思い込みがベタ過ぎて、その点リアリティが感じられませんでした。何でもワンテンポ早く行動してしまうという設定は良いとして、バスの車内で札束を数えてしまう迂闊さとかは、ちょっと種類が違う性格的特徴なんじゃないかと思わざるを得ません。

またその後の展開が読めてしまう場面も結構あり、あまり意外性を感じられなかったことも残念。

さらに、前半でハジメが惚れる桜子(福室莉音)の位置付けが、イマイチしっくり来ませんでした。事務所ぐるみでストリートミュージシャンからプロのシンガーソングライターになるという「ストーリー作り」をしているという設定でしたが、美人局みたいなこともしており、これまたいくら何でもという話で、もう少し自然な形にした方が受け入れやすかったように思います。

ケチばかり付けましたが、前半部をハジメ視点のパートとし、後半部をレイカ(清原果耶)視点のパートにして、別の人の視点に変えて同じ時間に起こったことの謎解きをするというのは、最近だと「怪物」とか「最後まで行く」でも見られた構成で、「あっ、またか」とい思わないでもありませんでしたが、これはこれで面白いと感じたところです。

あと、今年2月に急逝された笑福亭笑瓶が、本人役のラジオDJと、レイカがバイトしていたカメラ店の店主の2役で登場しています。撮影は昨年行われたんですかね。主役、準主役という役どころではないものの、ラジオリスナーであるハジメと何度も電話で会話したり、何処で撮影されたか分からないハジメの謎の写真が飾られたカメラ店の店主だったりと、かなり重要な役を元気にやっておられたので、その後程なくして亡くなられてことが信じられません。エンドロールで「笑福亭笑瓶さんのご冥福をお祈りします」的なテロップが出るといいなと思ったのですが、それはありませんでした。まあ映画の本題とは異なるのでいいんだけど。。。

肝心の主役の2人ですが、台湾版に比べると美男美女だったのは日本版らしいところでした。ただ、見た目可愛くて目立つ桜子との対比で、目立たない女の子というのがレイカの設定なので、福室莉音とはタイプが違うものの、普通に考えてかなり可愛い清原果耶を起用したのはどうなのかな、と思わないでもありませんでした。

以上、配役や構成はそれなりに良かったと思うものの、ストーリー展開がベタ過ぎた点やリアリティが足りなかったように思われることから、評価は★2.8としたいと思います。
鶏