まよいマイマイ

その日のまえにのまよいマイマイのレビュー・感想・評価

その日のまえに(2008年製作の映画)
4.8
約140分。最初から落涙。余命もの、だからではない。大林宣彦が高齢になってもこんなにアナーキーな作品を撮っていたんだなあという感動と、生存されていた時に観ておけばよかったという後悔の涙と矛盾して「今だからこそ」観ることができてよかったというタイミングに涙。全編に切ない旋律の伴奏が静かに流れる演出は『ふたり』を思い出させる。「余命もの」が嫌いな自分は意地でも泣きたくなかったが永作博美にやられ「余命」パートも号泣。『来る』でも強烈だった柴田理恵がシーンはわずかながら深い印象を残している。宮沢賢治の「永訣の朝」をベースに今作も大林が描き続けた「失われたものへの惜別と敬意」を感じる。時を越えて、場所を越えて、生と死、夢と現実、現代と宮沢賢治、すべてが集約されていく終盤はお見事。大林監督特有のよくわからない演出がところどころ入るのが感動を求める方には邪魔かと思う。ただこの作品はやはり大林監督の私小説であり、想いを閉じ込めた自分のための作品なんだと思う
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