櫻イミト

見世物の櫻イミトのレビュー・感想・評価

見世物(1927年製作の映画)
4.0
「魔人ドラキュラ」(1931)「フリークス」(1932)のトッド・ブラウニング監督による隠れた傑作。主演は「ビッグ・パレード」(1925)で感動を呼んだジョン・ギルバート&ルネ・アドレーが再タッグを組む。

ハンガリー・ブタペストの見世物小屋。芸人ロビン(ギルバート)は優しさの欠けた男だったが女性の人気を集めていた。ある日、大牧場の娘と知り合い彼女の大金を得ようと巧みに近づいていくが、かつての恋人で花形女優サロメ(アドレー)に邪魔をされる。一方、サロメに思いを寄せる悪漢のギリシャ野郎は、全てを独り占めしようと悪だくみを企てる。。。

1920年代当時の全盛期の見世物小屋が詳細に描かれていて資料的にも貴重な作品。演目は断頭芝居や蜘蛛女などのトリックもので”フリークス”の人々は登場しない。

このような社会の底辺を舞台に共感を持って人間ドラマを繰り広げるのはブラウニング監督ならではの持ち味だが、特に本作はヒューマンな色合いの強い感動作に仕上がっている。稀代の悪女サロメを舞台で演じる同名のヒロインが、物語が進むにつれて真の姿を現していくシナリオ演出が見事。それにつれて主人公も改心していき”物語の前後で登場人物のイメージを転換させる”という”脚本の理想”を鮮やかに達成している。

「ビッグ・パレード」の異国農家の娘役でも好演が光ったルネ・アドレーは、本作でも説得力ある眼の演技で魅せていく。美術もカメラワークも手が込んでいて、特に幻想的な街並みと絞首台の遠景には感心させられた。

ブラウニング監督作の中でも屈指の完成度を誇る、慈愛の見世物ヒューマン劇。

※見世物が好きなので「トリックといかさま図鑑」を片手に鑑賞
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