Kenjo

ファンタスティック・プラネットのKenjoのレビュー・感想・評価

4.1
こういう世界観ぶっ飛びすぎてもはや理解を諦める映画好き。Junk headと同じ。

ストーリーとしては人間をペットのように飼う巨大な人間型の生物・ドラーク族と人間が領地争いするような話。
全編ストップモーションアニメのようになってて、そこまで精巧なアニメーションではないけど、一瞬一瞬の映像がこだわりを感じる構図と人間界には存在しないような色味で書かれた不思議な世界が独特。
時折見せる構図が進撃の巨人でありそうな感じ。多分進撃の巨人も影響受けてそう。

テーマはなんだろうとか、何が伝えたい映画なんだろうって考えながら見てたけど、なかなか難しかった。

人間とドラーク族の関係はまさに人間と虫けらくらいの関係性。大きさ的に犬というよりカエルとかダンゴムシみたいな感じだと想像してた。普通に生きてて殺したり駆除することに罪悪感を感じないような存在。動物虐待とかへの批判とか込められてるのかなと思ってたけどそうでもない感じ。

ドラーク族の特徴は瞑想で、1日の大半を瞑想で過ごす。瞑想シーンはとても気持ち悪い、幻覚を見せられているような感じ。瞑想も何かの比喩なのかと思って考えてみたけど違いそう。最初は一日中やっててなんか無意味そうな感じで、現代の仕事を揶揄してるのかと思ったけど、最後を見ると違いそう。どちらかというと洗脳とか宗教に近いものを感じる。

人間の面白かったのはずっと学習機を持ち歩いてた点。知恵こそが人間を人間たらしめるものだと伝えようとしてるんだとは感じた。実際、人間の学習能力って他の生物には見られないような特徴ではあるけど、結局環境を自分たちの生きやすいように変換する能力と生殖能力で、今の人間中心社会が出来上がってる部分が大きいような気がする。バカみたいに勉強して頭が良くなるよりも、子どもたくさん作って人海戦術する方がよっぽど敵は怖いし、効果的なんだよって言ってるようにも見える。
まあ、最後の展開的に科学も大事的な話ではあるから分からん。

あと、毒ガスで人を殺すシーンで、毒ガスと言えば、、って感じで繋がった部分はあったな。フランス映画やし、笑
そこからどっちも同じ人間同士なのかなって考えると人種差別とかの問題に踏み込んだ作品とも言えそう。
瞑想してるドラーク族は、自分と違う宗教の人がよく分からん教義や儀式をしてるのを見て違和感を覚えるのと一緒なのかなとか。同じ人間同士でも格差があるっていうの、昔の奴隷制度の批判とも考えられそう。

現代の世界では、黒人白人とかの人種差別問題があるけど、肌の色が違ってるだけでほとんど同じ形した人類やけど、もし大きさとかが全く違ってたらどうなってたんだろうとか思ったりする。明らかに違う存在であれば差別以前に区別されて同じ世界で生きてなかったかもしれない。
結局人種差別も、目に見えない経済的な尺度で大きく差があるのは間違いなくて、歴史的な時期の問題もあれど、経済的・技術的な部分に分岐点はあったのかなと感じる。実際戦争を経て、国を征服したという事実は間違い無くて、それが異民族の戦いだったのか、異種格闘技戦だったのかという認識の違いが今の人種差別問題の根本にあるのかなと思う。
人種差別問題ってとても根深い歴史を持つ問題だから簡単に解決も答えが出ることもないと思うけど、なんにせよお互いを認め合って共存できればいいなと。日本はほぼ一民族一国家の島国だからあんまり人種差別について深く問題が起きるわけではないけど、日本にも差別の歴史はあるしそのへんをちゃんと知識として知っとかないとこれからも間違いを繰り返すんだろうなと思う。歴史を学ぶ意味ってこのへんにある。

キャラクターデザインの点で宮崎駿も影響受けてるって記事読んで確かにって思った。まじで思考回路が全く分からないレベルのキャラクターとか設定多すぎて、天才の頭の中を覗き見したような気分になる映画だったなー。フランスの芸術センスは世界的に見ても群を抜いてる。パリという街がそうさせるのかな。
Kenjo

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