たいよーさん

手のたいよーさんのレビュー・感想・評価

(2022年製作の映画)
3.8
ずっと観ていたくなるような暖かさ。濡れ場の多さからして確かにR18+ではあるんだけど、心のはだけた部分がジンと愛で埋められる感覚がする作品。松居大悟監督、やはり凄く良い。


おじさん好きで趣味は観察。元カレという彼は勃つかも怪しい。そんな彼女は家族の中でも孤立しているような気がする。そんな時に先輩と彼氏になり、重ねながら互いに寄り添っていく。序盤はハートフルで優しく、セックスを愛で形容する。その関係や思いが変わっていくとは知る由もなく…。

純粋に良いものを観たような気持ちになる。たまたま濡れ場がある、と言いたくなるほどピュアで優しい。満たされない気持ちをバイブで押さえつけたり、性愛描写が対比のように描かれたり。幸せな2人をいつまでも見たくなるし、そのセックスはどうだったのかとメモを見たくなる。同時に、その手に何が宿っているのか、なんてことを考える。都合が良いだけか、またまた信じて良いものか…。原作が存在するだけあり、装丁された関係性や変化が1つ1つはだけていくようで心地良い。確かに友達、カップルで観て語れるような作品となっている。個人的には、経験的にも大人になってないと楽しみ方が違ってくるとも思った…。笑

主演は福永朱梨さん。『本気のしるし 劇場版』や『彼女はひとり』でも好演を見せた、勢いのある女優さんだ。実際サインを頂いたこともあり、その活躍が楽しみだったが、女の子から女性として生まれ変わるような姿をまっすぐに演じられていて、どこか眩しかった。少し偏った見方だが、程良い肉づきが柔らかくて綺麗。繊細なグラデーションを感じる表情にもドキドキした。また、金子大地さんのキャラクターの雰囲気も堪らない。器用に見えて緊張しい感じがあざとい。そういうズルさが漂ってくる辺り、演出の妙とも取れる。


『愛してる!』が自己愛を駆り立てる作品だとしたら、こちらは他己愛を刺激するような作品だったと思う。幸い自分には今、大切にしたい人がいて、そんな人を抱きしめたくなる。今の感情なら、その手に嘘はない。
たいよーさん

たいよーさん