ブラックユーモアホフマン

窓辺にてのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

窓辺にて(2022年製作の映画)
3.8
サウナでかいた汗みたいな映画!

久しぶりの今泉監督のオリジナル脚本作ということだけど、やり切ってた。
とんでもない量の仕事をやってきたこの数年に溜め込んできたのであろう想いが滂沱の汗の如く流れ出していた。

丁寧な脚本だなーと思いつつ正直さすがに長さは感じた……。アケルマン2本観てから観たからかもしれないけど……笑

吾郎さんの芝居の感じに、序盤、小津映画を感じた。小津の映画の役者のような、ちょっとした相槌だったり、言い淀む言葉ともつかない言葉だったり、同じ言葉を繰り返したり、といった会話の中の微妙なリズム感まで、楽譜通りに演じているんだろうなという、ある種機械的な、しかし不自然だとか心が込もってないとか棒読みだとかいうことではない、あの独特な芝居の感じを、序盤、吾郎さんに感じた。が、他の役者も同じような芝居をしているというわけではないので、次第にそのアンサンブルの中に馴染んでいき気がつかなくなってはいくのだけど。

話自体からも、少しだけ、小津を感じた。話の広げ方と畳み方、一定のテンポで進んでいく感じが、なんとなく。

であるならば、というのは勝手な期待なのかもしれないけど、小津映画のように、やはりもう少し尺が短いといいな、というのと、もっとゲラゲラ笑いたかったな、とは思ったけれど、徹頭徹尾これでいくんじゃ!という覚悟、というのとも違うかもしれないけれど、貫かれていてすごいと思った。

ちなみに、妻の不倫を知りながらそれを悲しむこともなく何と言ったらいいのか分からず見て見ぬふりをしてしまっている男が主人公で、撮影が四宮秀俊さんということも相まって、『ドライブ・マイ・カー』のことはどうしても思い出してしまう。「村上春樹」という単語も出てくるし、監督は似てることに気づいていたのかなとも思う。

文学が題材になっている映画では、その文学の具体的な中身が全く出てこず抽象的に扱われることもあるけど、今回はちゃんと中身が出てきて物語と絡み合っていたのが、逃げてなくて素晴らしいと思った。しかもそれがモノローグで語られるというのもスマートだと思った。

【一番好きなシーン】
パチンコ屋に吾郎さんというミスマッチ感。からの「だめです。じゃあ」という簡潔な誠実さ。