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劇場版 荒野に希望の灯をともすのoのレビュー・感想・評価

3.7
35年にわたりアフガニスタンの復興に尽くした中村哲医師についてのドキュメンタリー。

序盤、中村医師の若い頃の日本では医療が高度化して延命治療が可能になり新たな課題に直面していた、という主旨のナレーションが流れる。
高齢化社会の始まりつつある時期。
個人的にはそのナレーションから、どのような行動も賛否が分かれて、そもそも純粋に正しい選択などあるのか分からないような状況を描いた『PLAN 75』を思い出した。

それに対して、生活物資や医療の欠如、戦争、洪水、旱魃と深刻な問題が次々と降りかかるアフガニスタンでの中村医師の行動は、非の打ち所がないほどの正しさがあることを感じさせる。
それも、退屈な正しさではなく、献身的で鮮烈な正しさ。
医療で人々の身体を治療するだけではなく、活動資金を集めながら、井戸や用水路を掘って人々のその地域での生活を可能にし、モスクに付属した学校を建てて教育を行わせ、社会に継続性を持たせた。
荒唐無稽な計画を発案してみずから土木工学を学び、故郷の川の江戸時代からある堰にヒントを求めてアフガニスタンの用水路を改良していく姿は時にユーモラス。
ドキュメンタリーなのに、現実とは思えないような力強さを感じた。

「(言葉だけが空転する軽薄な世相と)当地の絶望的な状況にあればこそ、実を以て報いたいと思います。」
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