Shiny太田慎一郎

劇場版 荒野に希望の灯をともすのShiny太田慎一郎のレビュー・感想・評価

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くにたち映画館の上映お手伝いで鑑賞!!
2回目の会では司会も担当させて頂きました!!

「彼らは殺すために空を飛び、我々は生きるために大地を掘る。彼らに分からぬ幸せと喜びが大地にある。」
哲さんほどこの言葉に説得力のある人はいないのではないでしょうか。

中村哲さんの言葉で「国際貢献という言葉嫌い」
劇中でも、哲さんが診察所を建設しようとした山岳地帯の人が「きまぐれで助けて去っていくのでは」と仰っていたように、
アフリカや中央アジア、東南アジアで、世界各国から沢山のNGOが学校建設など行っているが、ほとんどは失敗が多く、ただ外国人が建設しておしまいで、災害で天井が壊れたりなどが多い。
しかも世界最大支援国のアメリカについで2位が日本。
そんな中で哲さんが行っていたのは、一方的な支援ではなく、その土地に住む人々が自発的に生きる力を得られるようにしたこと。

非常に細分化された土木分野を、中村哲さんは1から、数学が苦手だったそうですが娘さんの教科書を借りて、そこから設計から現場監督まで全てを行った。たしか日本の土木学会でも2度も受賞しているとのこと。
自分の可能な能力範囲で物事を行うのが当たり前ですが、生きる環境を、飢餓から救うという目的のために新しく手段を学ぶというのは、哲さんにとってはせざるを得なく当たり前のことかもしれませんが、並大抵のことではないと思います。

ある方がおっしゃっていたのですが、こう見ると、人道支援というよりも温暖化の映画、災害、自然と人間についての映画とも感じられます。
アフガニスタンから逃れて難民になる人は、ほとんどが干ばつや自然災害、そこに戦争も加わって、より難民が増えていく。何十万人という命を救った、中村哲さんは自然の尊さを理解し、享受してもらうために用水路を作り、自然と人間の関係を築いた。
こう考えると、自然災害と戦争、4万人以上死亡と報道された先日のトルコ・シリアの地震のことを考えさせられます。自然との関わりで生死をさまよっているのに、戦争なんてしてる場合じゃないと。そう強く考えさせられます。

中村哲さんが襲撃された近くの街で彼の顔が描かれたおおっきな記念碑があります。
偶像崇拝がダメなイスラム教ではとっても稀なこと。
哲さんと共に働いた方が、検問所で日本人というと、「ナカムラ!」と返されるほど現地でも有名らしい。

生きるということの尊さと大変さ、その一方で命を奪うというのがいとも簡単に行われるということが、平和というのは当たり前なことではなく自ら積極的に得るものなんだなと胸に氷のつららが刺さるように実感しました。
また、なぜ生きているのか、なぜ争うのか、なぜ生まれてきたのか。人間というものの本質に迫った気がします。

2021年にタリバン政権が復権し、治安は良くなったとも言われますが、女子教育の機会が奪われ人権侵害、それから昨年からは劇中にもあったように大干ばつに襲われて人口の半分が飢餓の危機にさらされているアフガニスタン。

サクセスストーリーという単純なものではない中村哲さんのドキュメンタリー映画を見て、我々は今何を思考すべきか。どう生きるべきか。という言葉を最後に締めくくりたいと思います。