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ザ・メニューのyokoのレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.5
料理が映画のメタファーだと早いうちにわかっていれば、そこまで不条理さ、投げっぱなしに見えるような落ちに不満は感じないだろう。創作料理がどうこう、お店がどうこう、で観てしまうと不完全に見えるかもしれない。

アニャの目力の効果はクイーンズギャンビットの時と同じで身体が固定され動きのないチェスシーン、食事のシーンなどで画面を維持させる魅力がある。

とはいえ料理、食事描写だけでは動きが少ないと監督は感じたのか、無理矢理逃走イベントや格闘シーンを付け足してたるのだがそれは蛇足。急に普通の映画っぽくなる。

アニャが助かったのは機転や、料理(映画)の本質を知っているからというのもあるが、シェフと同じサービス業として客のマスターベーションを見させられたシンパシーから。「そうなんだよ俺も客のマスターベーションを見させられたんだよ〜」ってこと。あそこはかなり浮いたセリフでアニャがマスターベーションを見せられたというのだが、アニャの売春婦設定はともかく、セックスではある種の同意が必要なわけで、もっと過酷な体験もあろうに、凄惨な現状のわりにちょっと間抜けなマスターベーションという単語があそこででてくるのかがポイント。一方通行のマスターベーションを味わった同業者どうしということ。セックスではなく観る観られるが作り手と受け手が反転していることを示すエピソード。

アニャに踏ん切りをつけさすため、おばはんの手首くいっ、はカイジの鉄骨渡りの石田のおじさん的な最期の矜持みたいで好き。

1番の謎はなぜみんな動けないのかだろう。それは映画は文句を言わず最後まで座って観ろっていう監督のメッセージ笑。
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