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FALL/フォールのはのネタバレレビュー・内容・結末

FALL/フォール(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【総合】
・初めから終わりまでほぼずっと「ほらー高いところだぞー!」描写の連続で、手汗が止まらなかった。
・とにかく前半にはった伏線を丁寧に丁寧に回収していく手腕が気持ちいい!(ex.交差点、電気泥棒の裏技、ハゲワシ…)
 しかも全部絶望要素として出てくるから、気持ちいい&ハラハラしっぱなしで(いい意味で)脳がとても疲れた。
・絶望的な状況から生還するためにはとても強いモチベーションが必要になるけど、それが「シスターフッド」に起因するところが話としてうつくしい。ストーリーには物足りなさを感じたという意見もあるけど、2人の掛け合いにはちゃんと説得力があったと思う。
 究極の友情って「非の打ち所がない味方でいること」ではなくて「自分にあるものを相手に与えたいと強く思えること」なのかもしれない。

【ストーリー】
・女友達同士の会話がたのしい。
 危機的状況なのに(だからか)ずっと深刻なトーンなわけじゃないところが、かえってリアルだった。ハラハラする局面なのに「つぎ下におりる人はスマホを持って行くこと」みたいな遭難ジョークが出てくるところにもつい笑ってしまう。
・映画を観ながら「だからなんっでそういうことするかな?!?!」とは100回くらい思ったけど、昔は向こう見ずでバカやってたふたり(ポールダンスのくだりとかも)っぽいので、でかいことやってあの頃のわたしたちを取り戻そうよ!というトンデモ思考になるのもまあわかるかな……と納得した。
 やってることと動機が釣り合ってないといえばそうなのかもしれないけど、怖気付いてマトモになっちゃった友だちを発奮させるために、あえてハードルを上げたらこんなことに……って話ともとれる。
・案外ハンターは元恋人の散骨目当てで主人公を誘っただけで、純粋な友情からの行動ではなかった、とかもあり得そう。
・電話番号がリサイクルされて、旦那の留守電が聞けなくなったというのも大きな後押しだったのかもしれない。
・脱出劇、ドローン+スマホ2台という条件が揃わないように上手に調整されていたので、結果的にあれしか方法がないというのはよくできている。バックさえ落ちなければふたりとも助かってたのかな。
・テールランプ5回点滅的な暗号から浮気がばれるところの気まずさといったら……地上600mのところで友情を試されるのはきつい。いま死にそうなのにそういうこと言う??
・死んでくれと頼むからひとりにしないでのせめぎ合い。
・リュックをアンテナ部分に取りに行ってから戻るまでの流れが前半戦でいちばんの盛り上がりだった。「そのロープ本当に掴まれる???」ってところから、華麗にジャンプ決めてくれたのには心の中で喝采した。さすがハンター!俺たちのデンジャーD!!まあ、落ちるんですけど……
・鉄塔は600mと言いつつ先端まではいかないから、正確には「地上590メートルの絶望」じゃね?と思っていたら、きっちり600メートルまで登らせているところが鬼畜。チェリーパイソングを歌うハンターがかわいい。高所恐怖症メーターがカンストする景色だけど、いいシーンだった。
・「靴は貸せない」のところから一連の流れは、さながら絶望から希望へのジェットコースターで、観ていていちばんドキドキしたかもしれない。
 「自分が傷つけた友達の代わりに、せめてもの罪滅ぼしとして命懸けで鞄を取りにいく」というハンターの(ややもすると変化球の)友情に、ちゃんと主人公は応えたんだな……
 つまり、生き残りたかったら負い目は作らない方がいい、ってこと?
・ハゲタカを仕留めて覚醒したあと、パラボラアンテナに降りる足取りがめちゃくちゃしっかりしてて「あれっ実はこの人の方がハンターより上級者だったんじゃないの……?」と思ったり。恐怖のリミッターをいかに外せるかってけっこう大事なんだな。
・スマホの伏線が!!!回収された!!!
・SOSが来てから爆速で通報したパパナイス。いやでもアンタがちゃんと話を聞いとったらこうはならんかったんや。

【映像や音】
・オープニングが怖くて怖くて涙目になった。滑落するシーンを鳥の巣穴目線から映すのは意地が悪い。むごい。
・高さをアピールする音って「ヒュオオ…」くらいしか知らなかったので、「カン……カン……カラカーン(鉄骨の一部が塔にぶつかりながら落ちる男)」「カタカタカタ(ボルトが緩む音)」「ビイィ……(ワイヤーが張り詰める音)」などのレパートリーに驚かされた。
・スマホを入れて落とした靴にカメラを固定して背景がものすごいスピードで流れていくショット、冗談みたいな映像が逆に怖かった。
・真上を見上げる/真下を見下ろすカメラは定番で怖いけど、地上600mでやられると一層怖い。
・空気の温度が伝わってくるような光の映し方で、昼は暑いし夜は寒いんだろうなと過酷さが想像できた。
・スマホの中の録画映像がなんどか出てくるけど、小さな液晶で見ている感がちゃんとある。まさか画面を接写してるわけじゃないと思うけど、あれも加工なんだろうか。
・鉄塔を横から撮るシーンはキャストの肉体美にうっとりする。
・救助シーンを端折っていたのが個人的には良かった。これ以上ハラハラしたくない、はやく救助されてくれという観客の気持ちを汲んでくれたかのようだった。生き残り確定っぽいフラグが立ったらもう一秒も怖い思いしたくない。
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