Chang

MIRRORLIAR FILMS Season4のChangのレビュー・感想・評価

MIRRORLIAR FILMS Season4(2022年製作の映画)
4.2
【長文です】

本シリーズ名のMIRRORLIAR FILMSは、
山田孝之さんらがプロデューサーを務め、
クリエイターの発掘・育成を目的に
映画製作のきっかけや魅力を届ける
短編映画制作プロジェクトだそうだ。

今回はシーズン4として、
9作品が15分ずつ上映されるという。
(一般公募枠では計419作品が応募)

監督は、池田エライザさんや齊藤工さんなど
芸能界の著名人もいれば、
今回が初作品という若い方も混じっている。

特に印象的だった作品の感想を述べたい。

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池田エライザさんの作品
『Good night PHOENIX』では、
大切に飼っていた鶏の命を巡る
少年の葛藤を描く。

映像美というか、写真集というか、
動画版のポエムとでもいうか、
池田監督の死生観や美意識を強く感じた。
時間軸や場面転換にはついていく
というより圧倒されてしまったが、
総合的な表現力が突出していた。

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GAZEBOさんの作品
『BEFORE/AFTER』では、
作品づくりの佳境を迎えて忙しい
女子学生のもとに不思議な事態が起こる。

昨今の感染症を前提に置き、
当人にとってはシリアスかもしれないが
ユニークで可笑しな展開が続く。
ただ、その不思議な展開は、
ある一言をきっかけに自然と終わりを迎える。

素直で飾り気もない言葉かもしれない。
だけど、実直で力強く
「清濁含めてこれこそが人生」というような一言に、
自分にまで希望を灯された気持ちになった。

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水川あさみさんの作品
『おとこのことを』では、
人生に行き詰まった文字通り
"1人の男のこと"を絶妙な描写で観察する。

作品の大半が、うだつの上がらない
男が塞ぎ込んだシーンに費やされる。
だがこの男の気持ちは、痛いほど分かる。
本当に心が死にかけているときは、
働けない、動けない、片付けもできない、
部屋で電気もつけたくないものなのだ。
そんな男が、ある出来事をきっかけに
主体性を取り戻していく。

MIRRORLIAR FILMSのテーマは「変化」。
会話もわずかで、場面もほとんどが
部屋の中という1本に関わらず、
男の心境の移ろいが伝わり印象に残った。

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村上リ子さんの作品
『THE NOTES』では、
気難しい老人と少女の邂逅を描く。

実は今日、MIRRORLIAR FILMSを
観に来たのも、この作品が目的だった。

以前に、こちらの村上監督のnote
「ニートが10万円で映画を作ったら、
全国上映が決まった話」を読んだ。
未経験の20代前半の若者が映画を撮り、
全国上映に至ったことに驚いた。
今回その作品を観るため足を運んだのだ。

言葉が通じない2人が軸だが分かりやすく
ストーリーがすっと入ってくる。
暗い描写は最小限にとどめられており、
館内が明るい雰囲気と音楽で包まれた。
主人公と一緒に、喜びも悲しみも
彼らと共に体験している気持ちになり、
心揺さぶられる作品だった。
本来はもっと長い作品だったらしい。
フルの尺でじっくり浸って観たくなる。

noteを読むと分かるが、
村上監督は相当にクレバーだ。
この作品がこんな少額で作れないことは、
素人の自分でも予想がつく。
様々な工夫と調整力でその壁を突破を試みた。

その上で、余りのハードシングスの連続に
常人なら20回は心が折れそうなところを、
1度も折れず(実際は折れていたとしても、
周りに頼り支えられ高速で立ち直り)、
全力で希望を追い続けたからこそ、
チームが1つになり、結果的に
この大作ができあがったのだろう。

過酷で絶望的な 企画・準備・撮影の中で、
最後まで残ったメンバーたちが、
どんな状況でも消すことのできない
極めて明るい人間の愛と希望を描く
作品を作った。

それを、制作過程からの奥行きも込みで
今回味わうことができた。
これぞ「だれでも映画を撮れる時代」を
テーマに掲げるMIRRORLIAR FILMS の
醍醐味なのかもしれない。
Chang

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