たつり

ファルコン・レイクのたつりのネタバレレビュー・内容・結末

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

湖を中心とした大自然に囲まれたリトリートで過ごす日々の中で 年上の女の子と一緒にいる中で徐々に惹かれていく少年の恋模様を描くような古典的なフォーマットを念頭に置きつつ どこかそれだけでは終わらない映画

Bastien Vivès原作『年上のひと(原題:une soeur)』の筋書きに添いつつも ナイーブなティーンの心を精緻に描き 未成熟ゆえの「名前のついていない」感情や 憧れや魅力の裏にある嫉妬などアンビバランスさをを丁寧に盛り込むことで立体的に浮かび上がる主人公たち

本作で度々登場する湖にまつわる「幽霊」の存在が この自分でもわからない感情や それに対する不安や曖昧さと呼応するように外部化された表現として 明示的に導入されている

物語の要所要所で描かれる「幽霊」という装置を通して 本作は少年少女の内面やお互いの関係性に目を向かせることに成功しており ただの青春にはないオリジナリティを感じる部分となっている

否定的な見方をすれば あまりに明示的に言及されている箇所が多いことで 操作としてややうるさいと感じる部分もあるが 監督の明確な意図は感じることができる

他方 16mmを使い朝昼夜の湖の色々な顔や屋内屋外の主人公たちを綺麗に映しつつも 全編通してどこかフラットさが残り 一貫して平坦で淡白な印象を維持していることが 曖昧さを強調するような親和性を発揮して 得体の知れない感覚や緊張感が散りばめられている

極め付けは 限定的なダイナミックレンジで描かれる夜や暗所のシーンで 画の作り方そのものに 輪郭の曖昧さや不明瞭さを残す監督の妙を感じるばかりである
たつり

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