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ファルコン・レイクの3Dメガネのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
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『ファルコン・レイク』
8月25日(金)より、劇場にて公開中🎥🎥
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“人生で一度きりの夏”
日本の宣伝からはエモい青春映画の傑作感が溢れていますが
実際はそんなに甘いものではありませんでした。
この映画、不気味な雰囲気が充満しています。
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下記本文ではテーマ考察をしています!
鑑賞後に一読すると映画の理解度が上がるので
ぜひ読んでみてください!
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【アンビバレントな世界】
夏休みに避暑地で出会った
年上女性に恋心を抱く。。
こういったシチュエーションだと
もうエモい要素が詰まった青春映画が
確定しているように思います。
しかし本作は冒頭から不気味な音楽と
共に、人間が湖に浮かんでる
不気味なショットから始まるんですね。
若く、希望に満ちている筈の青春時代、
しかも夏休み。。
そんな甘酸っぱい要素が揃っていながら
この作品からは常に
”死”の匂いが立ち込めています。
一体どうしてなんでしょうか?
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本作はタイトルの通り、
湖のある町が舞台なのですが、
シャルロット・ル・ボン監督は、
インタビューにて、
「私にとって水中で遊ぶ行為には
喜びと恐怖が同居してる感覚である」と
述べているんですね。
このポジティブな要素と
ネガティブな要素が同居する
アンビバレントな感覚が
映画全編に漂っていると思います。
舞台となる湖で、
若者たちが遊ぶ姿が何度も描かれますが、
歓びに満ちたシーンがある一方、
冒頭のように”死”を
想起させる瞬間もあります。
自然という場所は、
陽が照っている昼間は美しいですが
夜間は少し恐怖を感じますね。

暗闇の先に何がいるか分からない感覚、
夜の湖に吸い込まれそうになる感覚。
この相反する要素が同居している感覚こそ、監督がこの世界を捉えている目線、
ならびに本作を貫く
イメージなのではないでしょうか?
ではなぜそこに青春という
舞台を用意したか?
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【ティーンであること】
10代という時期は、
なんとも不安定な時期です。
自己を確立できないまま
他人と比較して落ち込んだり、
大人の世界に憧れるも、
中々届かない現状に疎外感を覚えたり。
本作においては主人公の
14歳の少年がそうでした。
年上の女性に憧れるけれども、
彼女や年上達が所属するコミュニティには
全然なじめない。
孤独を感じてしまう訳です。
その世界に飛び込んでみたいという
欲求はあるけれど、
のけ者にされそうな恐怖も 
同時に存在する。
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中盤に描かれるパーティでのシーンでは、
少年が幽霊の格好をして踊ります。
この瞬間は場に溶け込んでいました。
途中からは
幽霊の格好を脱いで踊りますが、
年長者の肘が鼻に当たり、
怪我をしてしまいますね。
幽霊という“死”を纏えば、
生き生きと踊ることができるのに
自らの“生”をさらけ出せば、 
返り討ちにあってしまう。
こういった10代の”不安と欲望”、
“生と死”という相反する
感覚が本作の主題であり、この
アンビバレントさが交錯する映像体験こそ
本作の不思議な体験に繋がっています。
ラストショットまで
”不安と欲望”が同居しており、
映画的な瞬間に満ちた
切れ味のある幕切れだったと思います。
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【まとめ】
青春映画のパッケージなのに
どんどん不気味な演出が続き
最初は戸惑いました。
恐らく監督自身の
この世界に対する捉え方が
本作に反映された結果、アンビバレントな世界観に仕上がったのだと思います。
また年上女性を思い続ける少年の目線を生々しく捉えたショットも多く、
若者らしい欲望と不安が同居していて
素晴らしい映像でした。
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ひと夏の恋、
といえば聞こえはいいですが、
本作はそんな甘いものではなく、
怖さと爽やかさが同居した
油断できないリアルな一本でした。
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