柿トマト

レジェンド&バタフライの柿トマトのレビュー・感想・評価

レジェンド&バタフライ(2023年製作の映画)
2.0
役者が悪くないだけに…

木村拓哉、綾瀬はるかという人気スターの共演、実写版『るろ剣』シリーズやテレビドラマ『ハゲタカ』などで知られる大友啓史監督が目5本をとり、「絶対に成功させてやろう」という気概が感じられる本作『THE LEGEND & BUTTERFLY』。なにしろ東映70周年というメモリアルイヤーで20億円を投じて作られたのだ。何がなんでも日本映画の歴史に残るようなものを作ろうと思ったに違いない。

物語は織田信長と信長の正室・濃姫の出会いから別れまでの30年間を168分で描き切っている。本当にこれだけ聞くととてつもない「大作感」をもつが、(実際日本映画では破格の制作費、宣伝費も相当したのだろう)、実際鑑賞してみると「うーん…ショボい」という後ろ向きな感想に落ち着いてしまった。いくつか乗り切れない部分があった。

まず言っておきたいのは役者陣は良かったということ、主役の2人はやっぱり「華」があるし、信長に至っては映像作品では過去一かっこいいビジュアルで、ビシッと決まっていた。

それに信長が濃姫に促される形で、歴史が動いていったという解釈は面白かった。当初、信長はただの「うつけ者」で、桶狭間での諦めムードのなか、濃姫が打倒今川の策をひそかに信長に打ち明け、信長を段々乗せていくシーンは良かった。

しかし、その余りある魅力を足を引っ張るようなものが本作にはあるようで気がしてならない。

最初に信長と濃姫の出会いから別れまでという時間をたった160分程度で描くのは尺が足りない。政略結婚で初夜を迎えたかと思ったら、数年後…。信長の親父の葬式で…また数年後。というふうにただ単にエピソードの羅列で描かれてるに過ぎないので、1個1個が軽い。それに戦国時代を描くのに合戦シーンとかないのが非常に残念。いつの間にか戦に勝って、死体だらけの戦場がチラッと映るみたいな描写は見ていてつまらない。信長と濃姫中心に描けば、他の(歴史的な)エピソードはバッサリ切ってもいいのだろうか?。迫力あるシーンがないなら20億円というお金はもったいないとしか言いようがない。

それに30年という月日を、登場人物のメイク、演技だけに頼るのは「映画」としていかがなものかと。こういう作中時間が長い映画はもっと、「同じ場所なのに時間が経つと違って見える」とか「小道具やセットが劣化・風化していく様子」なんかを入れてほしかった。要するに「時代が変わったなあ」と思わせてくれるシーンが一つもないのである。せっかく、序盤で信長と濃姫が「夢」について崖で語るシーンがあるのだから、終盤でもそこに行くという映画的なサプライズもないのが残念。

また「映画らしい映画」を作る企画なのに、セリフ周りも気を遣ってほしかった。当初優しかった信長が天下を取るために女子供まで殺していくなか「こう人の心がない」って信長本人に普通言わせるか。そういうのを「映像」で表現し切れていない点であんまり面白くなかった。

総じて華のあるスター、豪華なセット、ロケーションを使った豪華な映画だが、いかんせん脚本が悪い気がしてならない。その魅力も半減する。
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