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空気殺人~TOXIC~のsonozyのレビュー・感想・評価

空気殺人~TOXIC~(2022年製作の映画)
4.0
イギリス本拠地のグローバル企業「レキットベンキーザー/Reckitt Benckiser」の韓国法人「オキシー・レキットベンキーザー/Oxy Reckitt Benckiser」が販売していた加湿器用の殺菌剤が原因で、致命的な肺疾患となる多数の犠牲者を出した韓国史上最悪の事件を題材とする物語。

大学病院で救急救命室の医師をしているテフンの6歳の息子・ミヌが意識を失い、病院に運び込まれる。
最近体調がすぐれなかったミヌではあるが、回復しスイミングスクールで泳いでいる最中の出来事だった。病院に運ばれたときには呼吸ができない状態になっており、テフンの診断の結果、肺が硬くなる“急性間質性肺炎”という致命的な状況で治療不可能の植物人間状態に。
さらに、一旦自宅に戻ったテフンの妻ギルジュも同じ肺の症状で突然亡くなってしまう。
突然の悲劇に絶望するテフン(キム・サンギョン)とギルジュの妹の検事ヨンジュ(ソ・ヨンヒ)は、その不可解な疾患の原因について調査を始める。

原因の特定は容易ではなかったが、やがて韓国では多くの家庭で使われている加湿器の水に混ぜて使うO2/オーツー社の殺菌剤(透明の液体)が原因という衝撃的な事実が明らかになる。
被害者を取りまとめ、裁判に持ち込むテフンとヨンジュに対し、オーツー社側は次期CEOとなるウシク(ユン・ギョンホ)が仕切るチームで製品に問題はないことを主張し、被害者の買収も始め、テフン率いる原告団が不利な状況に。
ウシクはテフンに対してもある話を持ちかけるのだが・・・

概要を知った上で観たので、前半やや冗長に感じたところもありましたが、ある場面から事態が一転するところが秀逸です。

加湿器内に発生しやすいカビを防ぐという効果を歌いながら実はそのPHMGという成分に毒性があったという最悪の製品が、政府機関の認証も受け、なんと1994年から2011年までに累計1,000万本以上のボトルが販売され、2020年時点までに死者20,000人以上、95万人以上が健康被害に苦しむという最悪の事態となったという事実。
本作ではどこまでフィクションが加わっているのか分かりませんが、いずれにせよ、この企業はもちろん、認証した政府機関、企業の不正を隠蔽する専門家チームの胸糞たるや。。。

こんな酷い事件も、徐々に風化していく中で、犠牲者と遺族の痛みを伝え、悲劇を二度と起こさないために製作されたという意義は大きいですね。
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