スキピオ

ブロンドのスキピオのレビュー・感想・評価

ブロンド(2022年製作の映画)
3.5
<評判から食わず嫌いはもったいない>

「ここが史実と違う!」「彼女を不幸に描きすぎている」「女性搾取の描写が耐えられない」など、公開時から非難殺到の一作。

前提として、マリリンモンローをモデルにした小説の映画化をした伝記風映画で、伝記映画ではないということ。

小説を基にした伝記風映画ってのがどこまで脚色が許されるかっていうのもあるけど、普通の伝記映画も脚色入って事実に基づいてないのもたくさんあるし。ある程度脚色しないと劇映画にする意味って何?ってなってしまう。批判してる人って、「ドキュメンタリーが客観的ではない!」って怒る人に近い感じがするんだよな。映画化される時点で完全な事実100%は無理なわけで。

一部しなくていい脚色があるのはわかるけど、「性のシンボル」として常に見られ、もてはやされ、彼女は実像と虚像のギャップに苦しみ、ドラッグに頼っていたというのは実際にあったわけで、そういう視点を中心に撮ることは別に悪いことではない。

描写がキツめなのも、そういう時代の、そういう人を扱った作品なのでしかたないかと。あと、遺族がどうこう言っても「本当のところ」は誰もわかんないじゃないですか。

映画としては、栄光の有名人がだんだんと錯綜して転げ落ちていく「ブラックスワン」みたいに鬱映画として完全に振り切っていて、映像や撮影も幻想的でキマッていて、その種類としてはとてもレベルが高いんですよね。

誰しも注目しているであろう若手女優アナ・デ・アルマスも、主演としてかなり力を入れていい演技をしているので、評判から食わず嫌いするのはもったいない。