3029th

エゴイストの3029thのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2/10(金)公開の「エゴイスト」を試写にて観せていただきました。

松永監督は「君の名前で僕を呼んで」を参考としていたそうで、美しい映像を撮りたかったという言葉通り、自然光を生かした画や静寂とクラシック音楽づかいが素敵でした。
(言われてみればクラシックはちょっと"寄せ過ぎ"な気がしないでもなかったけれど…)
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キャラクターたちの振る舞いや会話が自然で身近。
監督は元々ドキュメンタリー出身で、基本的にワンシーンワンカット、説明的な台詞が出てきたらカットをかける、演者には相手役に指示した内容を伝えないなど、その時その瞬間に何気なく出てきた仕草や会話を収めることを大切にしていると仰っていました。

鈴木亮平さん演じる雑誌の編集者・浩輔のファッションも興味深くて、冒頭は分かりやすいロゴの入ったハイブランドのストールやチャレンジングな色合わせで"武装"感を出しつつ、後半はベーシックな色で落ち着いた雰囲気ながらジャケットは(おそらく)ラルディーニ。鍛えた体にピッタリ沿っていて、パッと見の印象が地味になったからとて"ファッションは鎧"という浩輔の美意識が健在であることが伝わってきてとてもよかったです。
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男性同士の恋愛はもちろんですが、宮沢氷魚さん演じる龍太が直面する若者の貧困やヤングケアラー問題、龍太の母が経済的に子に依存する姿など、メインキャラクター3人にそれぞれ異なるベクトルのエゴがあると感じます。

物語の序盤、こんなにまっすぐに感情表現するキュートで母親思いの若者なんている?詐欺じゃないの?とか正直思っちゃったんですけど(笑)、母子家庭で体を壊し経済的に息子に依存する母親や、若い男性だから自分が働かなければと他人に頼ることができない(もしくは若いんだから君が働けばいいと行政に断られたのかもしれない)龍太の頑固さはある意味でエゴに見える。

浩輔は浩輔で、側から見れば少し心配になってしまうくらいに、与えることが愛情を示す手段だと思っている。

他者に与えることで充足感を得るエゴもあれば、自分がかわいいエゴもある。エゴの形もいろいろあるのだな、と気付かされました。
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