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エゴイストのkのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

龍太は体の弱い母を養っている。高校中退であるがゆえに稼ぎは少なく、身体を売ることで生活費の足しにしていた。浩輔と出会ってからは、浩輔のことを愛するが故に売春していることへの罪悪感が拭えず、それまでのように「ちゃんとできなくなった」と言う。

浩輔は、自分が龍太の母の生活費の援助をする代わりに、身体を売ることを辞めさせ、龍太と共に生きる道を得る。お金をもらう立場になった龍太は少しも罪悪感を感じていなかったわけではないだろうし、二人の間に上下関係ができたように見えなくもない。だけど、束の間の甘く優しい生活は続いていく。

龍太は、浩輔の援助では足りない分を補うために昼夜を問わず肉体労働をするようになり、過労で亡くなる。

恋人を亡くしてもなお、病に臥せる恋人の母を援助するという、愛ともエゴとも言える行動。「ごめんなさい。僕のわがままです」と言いながら、母にお金を渡す。

自分の身勝手さに気付き、苦しむ浩輔に、龍太の母は「あなたは謝ることなんて何もしてない。私の勘違いじゃなければ、あなたは私たちを愛してくれた」と話す。浩輔は「愛が何かわからない」と言うが、「それを私たちが愛だと思っているなら愛」と話す。

龍太が浩輔に出会う前のように身体を売り続ける生活を続けていたら、肉体労働に勤しまずに母を助けられたかもしれないし、死なずに済んだかもしれない。

ただ、龍太と母は、浩輔に出会わなければ、最期のときまで愛してくれる人に出会えなかったかもしれないし、浩輔は誰かに献身し、愛することを知らなかったかもしれない。どちらが幸せだったのだろうか。人生の最期の瞬間にifは実現しえないけど、二人とも幸せだったんじゃないかと思う。

愛とエゴは表裏一体だけど、相手にとって愛ならば愛。
おそらく浩輔の話を聞いてた友達たちからしたら、浩輔の行動は「それってあんたのエゴじゃない?」って思ったら人もいるかもしれない。でも、相手にとって愛ならば愛だ。その事実は、誰にも否定することはできないのだから。
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