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カムイのうたのBCのネタバレレビュー・内容・結末

カムイのうた(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

汽車が走っている場面が模型ぽく見えてしまったり、
映像はインディーズならではのチープさは感じてしまったな。
それと、その時代の東京に電柱はあったのだろうか?

日本で起こっていたけど、映画やドラマではあまり描かれてこなかった
タブー視されていた?知られざる史実に切り込んだ映画といえば『福田村事件』を思い起こすが、
ハードな描写が目立った『福田村事件』よりかは
ソフトなタッチで描かれている印象で家族・人間ドラマとしての側面を浮き彫りにしている。

私はアイヌ民族に関しては教科書に出てきた内容ぐらいの知識しかなく、
迫害的な差別を受けていた史実は初めて知りました。
女性というだけでも見下されていたであろう時代、
少数民族であることで差別が待ち受けている日々の辛さは計り知れない心痛であろう。
アイヌ民族のポリシーはユーカラを通じて受け継がれつつも
母・祖母世代は民族の習わし?で口周りに黒い入れ墨を入れているけど、
テルは身体に入れ墨入れてなさそうなのを見ると
時代の流れと共に民族独自の文化の中でも継承すべき文化(ユーカラなど)は繋いでいき、
時代遅れの習わしは取りやめていったようにも感じる。
土葬の風習にも意義を唱えていた描写もあったし、
アイヌ文化の全てを讃美するのではなく、その時代におけるアイヌ民族と倭人(日本人)の関係性の実情を見つめた視点が印象深かった。

主役の女優さんは若い頃の仲間由紀恵や国仲涼子似の美人だけど、
泣きの演技が多いテル役には役不足だと感じてしまった…
望月歩の床にポタポタ落ちる落涙演技や清水美砂の鼻水泣きのインパクトが圧倒的だったので存在が霞んでしまった感じ。
このテの作品なら新進女優抜擢するにしても台詞回しや表情は拙くても
泣き演技はキッチリ出来る女優じゃないと説得力がない。

前半の女学校の教室場面(日直のくだりの2場面)で先生役を演じていたのは遠藤雅(朝ドラ『ひまわり』松嶋菜々子の弟役、映画『川の底からこんにちは』満島ひかりの相手役)でしたね。
アップはなかったけど、声と目元でわからました。
台詞は最初の場面のみだったけど、滑舌良いし声が通っていた。
わずかの登場でも演技の素地があるのは明確でした。
今の本職は地元(北海道)局のリポーターで俳優業は地元制作の作品のみのようですが、
もう少し大きな役でも観たいですね。

島田歌穂はユーカラはさすがの上手さだし、ミュージカル女優だけど舞台調にならず自然な演技で良かったです。
芯のある女性をキツくならずにたおやかに表現してました。
ただ、ラストの主題歌は歌い上げ方がミュージカルぽくて少し違和感でした。

加藤雅也は飄々とした口調ながらも言う時はバシッと言う
おっとりしつつも漢のあるキャラクターは自身のラジオでの雰囲気ぽくて、素に近い親近感のもてるキャラクター。
テルの死を悼む台詞回しはとても心がこもっていて、客席からは啜り泣きも聞こえましたよ。
テルは北海道にいる時から症状はあったので教授のせいではないのに
それを知ってか知らずか責任を感じてしまっている言葉がせつない。
この場面の表情アップで撮ってもらいたかったですね。
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