KUBO

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVのKUBOのレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
4.2
ここまで違うものか。

1本の映画を作る上で、編集素材は実際のランニングタイム以上にたくさんあるとは聞いていたが、『ロッキー4』では全く使われていなかったシーンが次から次に出てきて驚いた。

だいたい冒頭に「アイ・オブ・ザ・タイガー」が流れない。

細かくその違いをひとつひとつあげつらうことは避けるが、一番大きな印象の違いは、

80年代のMV風だった軽い作風が、落ち着いたリアルな作品になった感じがする。

『ロッキー4』でチャンピオンになり裕福になったロッキーにハングリー精神がなくなった的な表現がなくなり、対ソ連戦という政治的要素が強調される。

『4』には出てこなかったロッキーとアポロの会話や、アポロのトレーナーの弔辞、ボクシング協会での会議の様子など、重要なシーンが初登場。『4』の時にここカットしてたんだっていう、監督による取捨選択が興味深い。

逆にドラゴの奥さん役のブリジット・ニールセンの台詞のあるシーンはほぼカット。(小ネタだが、スタローンは『ロッキー4』の後、エイドリアンじゃなくてこのブリジット・ニールセンと結婚。だがこの女、スタローンとも2年で別れるのだが、その後もほぼ2年毎に結婚と離婚を繰り返すという恋多き女。そんなこともあってのほぼほぼカットということなのかな?)

「俺は変わり、あなた方も変わった。みんな変われるんだ。」という台詞。『ロッキー4』の時には冷戦時のまだソビエト連邦だったロシアに向けた言葉だったが、ウクライナを侵略するロシアへ向けて今再び聞くこの台詞は、当時よりも虚しく響く。

でも、どうなんだろうな? マクドナルドが去ったロシアで、普通の国民はロッキー(アメリカ)を求めているのかもしれない。

80年代の懐かしさいっぱいのMV風な『ロッキー4』もノスタルジーから捨てがたいが、映画としてはこの『ロッキーVSドラゴ』に軍配を上げる。

監督シルベスタ・スタローン、素晴らしいじゃないか! オールドファンはもちろん、初めて見る若いファンの人にもオススメ! これが『ロッキー』だよ!
KUBO

KUBO