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そばかすのはいのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
4.0
(まず、「恋愛や結婚だけが人生の全てでは無い」という思考と、アセクシャル/アロマンティックの尊厳はベクトルこそ同じではあるが本質的に一緒くたにしてはいけないと慎重になろうと思う。それは少なからず暴力性がある。)

セクシャルマイノリティという境遇を同じにするゲイの友人からも''いない"ことにされる主人公の孤立無縁を描き、この世界で生きていく上での溜息と妥協の数を数える。

アセクシャル/アロマンティックの存在の可視化によって、同時に恋愛が重力であるこの社会の歪さと狂気を露呈させていく。
作品を観る多くの非当事者すら、この重さに耐え兼ねていると気づく。

名前の次に恋人の有無を聞き、恋人がいる人を「リア充」と呼ぶ世の中。
生活の全てが恋愛の延長線上にあるかのような会話、当然のように恋愛をして、その結果当然のように結婚してその結果当然のように子供を授かる、みたいな規範、それに順ずる価値観。

その時間割、制服、校則みたいな一本道に違和感を抱くことも儘ならない。何か一つ声に出すと作中のように「多様性ね笑」という揶揄で返ってくる。
誰もかれもみんな、恋愛結婚出産(雑に挙げると)が幸せという前提で人と接するのをやめてください。
それなら誰もかれもみんな結婚できる法整備を進めてください。

この作品は
「同じような人がいて、どっかで生きてるんならそれでいいや。」
と終わるが、実際に手と手の暖かさを確認できず「精神的な連帯」を頼りに生を繋がないといけない世の中は、あまりにも窮屈だとやっぱり思う。
今作の三浦透子演じる主人公の佇まいには、どこか逞しさがあり決して悲観的ではなく、最後に走り出す姿は未来を予感させる。その意味でこの作品が"可視化"に留まらず、エンパワメントを試み、スタートラインを象るものだと信じたい。
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「そばかす」がトリを飾るこの「#ノットヒロインムービーズ 」企画は、(個人的な解釈として)フェミニズムを根幹として社会にも身にも染み付いた"規範"を引き剥がしていく物語だ。
「#わたしたちは大人 」での自分のために料理をして自分だけで食卓に着く姿、「#よだかの片想い 」での最後の舞い、「#そばかす 」での連帯と走り。
特には、そばかすにおける「片膝を立てる」シーン。上記の点で、これまでの規範に新しいやり方で中指を立てる(片膝を立てる)あのシーンはとても象徴的だった。
はい

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