南森まち

アグネスを語ることの南森まちのレビュー・感想・評価

アグネスを語ること(2022年製作の映画)
4.1
1952年米国で「男性軍人が女性になって帰国する」というニュースが話題になる。彼女に関する研究を再考するドキュメンタリー。

うーん…70年前なんて想像できないけれど、その時代にこういう事象が起こっていたのには驚いた。
性適合手術を初めて受けた米国人。彼女の登場は自由の国アメリカの象徴として捉えられ、トランスジェンダーが「発見」された。
ここからアメリカ内でトランスジェンダー達による活動が始まるきっかけとなっていく。
その一方で反感を持つ人々や、トランス特性による職業差別を受けている人々が意見を戦わせ政治問題にもなった。それが現在の状況を作ったことがよく理解できた。

本映画では1950年代当時のUCLAの教授による調査記録を紐解く。
残されたインタビュー記録を現在のトランスジェンダー達が演じる…というチェイス・ジョイント監督が製作した『ノー・オーディナリー・マン』と同じ構成になっている。
ただ、性文化の研究者が多数登場し解説するため、非常に理解しやすくなっている。

監督のテーマである、「ドキュメンタリーってなに?自分の主張を強固にするためにうまく歴史の記録やインタビューをつなぎ合わせたものではないか?」という問いかけも存分に発揮されていた。

本映画では悪役のような扱いだけど、1950年代に多数の人にインタビューしアーカイブ化していた博士もスゴいなぁ…さすがUCLA!