社会のダストダス

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

4.0
ハーヴェイ・ワインスタインのニュースが騒がれたのって、まだ結構最近かと思ったがもう5年も経つ。このオッサンのこと自体は別にどうでもいいが、これを皮切りに大勢の映画人が次々に槍玉に挙げられていくことになるので、事件の影響には複雑な思いがある。

冒頭でジャーナリズムの観点からドナルド・トランプがいかにウ○コ💩であるかが語られるが、本作はウ○コ💩を郵送で送り付ける男よりもタチが悪い、ウ○コ💩に集る小バエ以下の変態の蛮行を暴いた記録である。直接の描写こそ映像に映らないものの、ウ○コ💩を直視するよりも気分が悪くなるようなエピソードもあるので注意されたい。

#MeToo運動のきっかけとなった事件を取り扱う映画だけど、その間に同様の題材の映画が巷に溢れかえったために、皮肉な事に今更感が漂ってしまったのか、多分アメリカで興行収入が不振な理由の一つなのじゃないかな。一つの映画の企画から公開までに3,4年くらいはかかる映画界のサイクルからすれば、つい昨日くらいに起きた“現在”の出来事でも、もう世の中では“過去”になりつつあるのかというギャップを感じる。

かくいう自分も病院の予約時間までの3時間余りの暇をつぶす目的がなければ、正直なところあまり食指が動かなかったくらいに本作の事はノーマークだった。結果としてとても面白かったし、ウィキやまとめ記事を読む以上の収穫があった。

作品の雰囲気としてはあまりドラマチックな起伏の無い社会派サスペンスといった感じ。似たような実話物でいえば、フィンチャーの『ゾディアック』やイーストウッドの『リチャード・ジュエル』のような淡々と進んでいく会話劇がメインの作品は好きなので、知らない監督だったけど自分の肌には合った。

「ワインスタインが世の中に何人いるのか」という台詞が印象に残ったが、ハリウッドの支配者が陥落してもなお全貌の見えない問題で、きっとこれからも新しいワインスタインが出てくるのだと思う。フォーカスされたのはワインスタインだけど、登場人物の一人が言ったようにシステムを変えないと、10年経っても違う事件で同じような題材の映画が作られることになる気がする。