ホリムベイ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのホリムベイのレビュー・感想・評価

4.2
事件は立件されワインスタインには実刑が出ている。
しかし、映画にする意味がある。そのことを映画を通して学ぶことになる。

制作はブラッド・ピットのPLAN Bで、個人的には「ウーマン・トーキング」に続いてのPLAN B作品だった。

「ウーマン・トーキング」と同じくこの作品も対象年齢はG。つまり誰でも観ることができる。ひどく凄惨なことを扱いながら、暴力描写を用いないのは、センセーショナルを排する意思があるからだ。この映画には(そして「ウーマン・トーキング」も)、もっと大切にしていることがあるし、それをPLAN Bが支えているように想像した。

告発を扱う映画にはサスペンスの要素があり、それが物語の駆動力となる。しかし、それは諸刃の剣でもある。暴力描写と同じく、サスペンスにも映画的魅力があり、構造として映画がエンタメ化したがるからだ。そしてもちろん多くの人に伝えるからには、おもしろい方が良い。そして実際に被害者はいる。
そうしたバランスの中、この映画に力を与えているのはなんと言っても俳優だろう。主役のふたり、新聞社の同僚、女性たち、数人の男性の演技が皆すばらしい。

そしてこれはサラリーマンの仕事やチームを扱った優れた映画でもある。アメリカの魅力がそこに詰まっているようにも思う。

それから「SHE SAID」という英語のニュアンスが自分は分からないので、これを把握したいと思ったら、
しかし邦題についている「その名を暴け」(原著の邦題も)、間違っているように思う。その名がワインスタインならばその名はすでにわかっているし、その名が女性のものなら、暴け、という語はふさわしくないように思う。記事にして、ワインスタインの名前を暴け、という意味なのか。しかし、もしそうでも、主人公の2人のメインの気持ちはそこにはないように思う。

邦題がこうなっているのは、その方が多くの人に訴えると出版社も配給会社も考えたからだろう。過度に乱暴な言葉選びは、映画自体が暴力シーンを排しているのと真逆の姿勢に見える。だからこそ、日本中で見るべきだと思うし、そう思うのはもちろんジャニーズ事件があるからだ。
そして映画だからこそ伝わることがあると思う。容易に想像できないことが行われていたからだし、容易に想像できることが想像できなくなっていることを知るからだ。