ayaha

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのayahaのレビュー・感想・評価

5.0
良作。今まさに日本でも報道されてるジャニーズ喜多川の性加害(というか厳密には大量の児童虐待なので悪質さでは数段上だと思うが)と被る内容なんだけど、ほんと欧米と日本の性加害に対する意識の違いがよくわかってむしろ絶望感は強くなったかもしれない。

まあ、確かに痴漢冤罪とかもあるにはある。
ただ明らかにどこから見ても性犯罪といえる場合でもなんか加害者にどこか甘いというか、ましてや権力者となると。
これ支配する側の人間に黙って追随する価値観(家夫長制的な)からきてると思うんだけど、なぜなら性犯罪って性欲以上に支配欲、マウント欲だっていうから。
それは私自身も過去日常で受けてきたセクハラ発言レベルでもひしひし感じた。
まだその場でやめろと相手に怒れた場合はあんま後ひいてないけど、今だに思い出すと腹立つのは怒ると状況的にこちらが不利になるのは明白なので黙って流したパターンなんよね。
ぶつけられたゲスい言葉以上に我慢するしかなかったことに対する悔しさや自己嫌悪は何年たっても消えてない。
もちろんこんな些細な感情ワインスタインの被害者たちの酷いトラウマとは比べようもないけど、いきなり性的支配や人格否定され心の傷になったという意味では同じだし、あまり他人に話したくない気持ちもたぶん同じ。
だからけっこう共感しながら見ることができた。
そして性加害された側が報道に告白するのってもの凄い勇気と覚悟がいるんだなぁと。
でもその一方で今は家族がいたり別の仕事をしていたり、守りたいものがある人が墓まで持ってくつもりで黙ってることもまたその人の権利だと思ったりもした。
ましてや当時示談に応じて書類にサインもしてたら不利なのは事実なので絶対無理だと諦めるだろうし、そこを乗り越えることは容易ではないだろうし。

そんな被害者たちに対して慎重に理解を示しながら接し、地道に取材を重ねた女性記者2人の描写も良かった。彼女たちも母親で妻であり、そのことで何かを諦める必要はないのだというメッセージにもなってたと思う。
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