Omizu

ザ・クロッシングのOmizuのレビュー・感想・評価

ザ・クロッシング(2021年製作の映画)
3.7
【アヌシー国際アニメーション映画祭2021 審査員賞】
フランスの手描きアニメ。監督のフローレンス・ミアイユは短編を数多く手掛けたが、長編は今作が初めてとなる。アヌシー映画祭でコンペ入りを果たし、セザール賞ではアニメ映画賞にノミネートされた。

1905年、ユダヤ人虐殺を目的とするポグロムに村を焼かれた姉弟がウクライナ・オデッサを離れ国境を越えようとする物語。監督の母、祖母の実話を基にしているそうだ。

油絵のような厚塗りタッチで紡がれていくアニメーションが独特。エンドロールの作業工程をみると本当に手で描いている。想像もできないほど気が遠くなるような作業だ。

ことあるごとに捕まり、そして逃げる。この繰り返しではあるが、人物配置やファンタジックな演出がよく出来ていて飽きさせない。

オーソドックスに物語を語りつつ、鳥などの自然を生かし人間の生きる力を表現する。

絵描きになった母、そして後を継ぐようにアニメーション作家になったその娘というこの映画のバックストーリーを考えるだけで胸熱だ。ウクライナ侵攻が続く今観るべき一作であるし、純粋にアートアニメとして出色の出来である。
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