【第8回ベルリン映画祭 監督賞】
『武士道残酷物語』などの名匠・今井正監督作品。ベルリン映画祭に出品され監督賞を受賞、キネマ旬報日本映画ベストテン第2位にも輝いた。今井正は同年『米』も監督し、キネ旬日本ベストワンを受賞、1位と2位を独占した。
水木洋子が手掛けた脚本が非常によくできている。不良少年、少女の愛を軸にしつつ、原爆がもたらした病を描いている。
カラーで紡がれた映像も非常に素晴らしい。何か特別な効果は感じないものの、ビシッと決まった画面構成が光る。
生れながらに貧しく、不良として生きることしか出来ない二人の青年を演じた江原真二郎、中原ひとみも好演している。
貧富の差が広がる東京で巡り会った二人、正直言動が賢いとは言えずイライラしてくるが、そんな普通からは外れてしまった二人を見事に描き出した今井正の手腕がうかがえる。市井の人々をリアルに描写するのが得意な今井正らしい作品と言えるだろう。
難病映画という評もあるが、それはちょっと違う気がする。少女がかかるのは原爆による健康被害であり、もちろん難病ではあるがそこが主軸ではない。あくまで青春メロドラマとして描いていることに特徴がある。そこに背景として広がる戦後日本の闇、それこそが水木洋子、今井正の両氏が描きたかったことだろう。
社会派作品を評価する傾向のあるベルリン映画祭の系譜を思えば当然の受賞だったと言えると思う。ようやく今井正の作家性をつかめてきた気がする。